アッコちゃんの時代

小説『アッコちゃんの時代』

林真理子の小説『アッコちゃんの時代』は、2005年8月に新潮社から出版されました。この作品は、著者が好きなバブル時代を基盤にしており、『不機嫌な果実』や『ロストワールド』に続くバブル三部作と）が呼ばれています。物語は、実際の出来事を元にしたフィクションであり、当時の社会的背景や人々の心理を巧妙に描写しています。

あらすじ

物語は1980年代、東京の六本木を舞台に展開されます。北原厚子は、裕福な人々に囲まれた女子大生で、彼女はやがて「アッコちゃん」と呼ばれ、夜の街での人気者となります。バブル景気という経済状況の中で、彼女は金持ちたちに囲まれ、次第にその世界に引き込まれていきます。

厚子は、銀座のクラブママである邦子と「地上げの帝王」と称される早川と出会います。早川の積極的なアプローチに心を惹かれ、彼女はついに彼と関係を持つことになります。その結果、メディアに取り上げられ、一躍有名人となった厚子ですが、早川は次第に衰退していき、厚子は再び六本木での生活に戻っていきます。

次に彼女が出会うのは、飯倉のレストラン「キャンティ」の御曹司、音楽プロデューサーの五十嵐です。厚子は彼の豪華な貢ぎ物に心を奪われ、一年間だけの関係を持つことに決めます。しかし、五十嵐の正妻である人気女優、片倉ミキにその関係が知られてしまい、運命の歯車は再び動き出します。

二人はヨーロッパへ旅行し、厚子はバブルならではの贅沢な生活を楽しみますが、その一方で彼女は五十嵐との関係が公然の秘密となり、その波乱万丈な生活が続きます。戻ってきた厚子は、学生時代のボーイフレンドである高志との関係を再構築しようとしますが、五十嵐の執拗な求愛に負けてしまいます。

その後、彼女は妊娠し、五十嵐との高級マンションでの生活を始めます。再びメディアに注目され、周囲の好奇の目にさらされることに。厚子は試練に立ち向かう中で、次第に五十嵐の心が他の愛人に移っていくのを感じることになります。

最終的に、バブルが崩壊し、早川の死や友人の奈美の結婚など、周囲の状況が一変していきます。厚子は五十嵐とは離婚せずにいたものの、再び六本木の華やかな世界に戻っていき、IT長者である堀内の愛人となります。

登場人物のモデル

この小説には、実在の人物に基づいたキャラクターが数多く登場します。五十嵐厚子は実在の川添明子がモデルであり、彼女は大学の先輩を通じて早川と出会います。友人の奈美は尾崎繁美が、地上げの帝王・早川は最上恒産社長がモデルとなっており、リアルな社会情勢との結びつきを感じさせます。

さらに、銀座のクラブママである井上邦子は安達洋子が、飯倉キャンティの御曹司である五十嵐英雄は川添象郎がモデルになっています。

まとめ

『アッコちゃんの時代』は、バブル景気を背景にした女子大生の恋愛と人生の波乱を描いた作品です。 多くのリアルな人物が登場し、キャラクターの心の動きや社会の変遷が生々しく描写されています。林真理子の作品らしく、興味深いストーリー展開が読者を引き込み、この時代の贅沢な生活とその陰に隠れる苦悩を同時に感じさせる仕上がりとなっています。

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