アッコ包囲戦 (1799年)

アッコ包囲戦の概説

1799年に起きたアッコ包囲戦は、ナポレオン・ボナパルトが指揮するフランス軍が、オスマン帝国の港湾都市アッコを攻撃した重要な軍事衝突である。アッコは現代のイスラエルに位置し、その戦略的な重要性から、ナポレオンはこの町を制圧することが自身のエジプト侵攻計画において不可欠であると考えていた。

背景

アッコは、エジプトとシリアを繋ぐ要衝に位置しており、ナポレオンの軍事戦略において重要な役割を果たすと見なされていた。彼は、オスマン帝国に対するシリア内の反乱を助長しつつ、イギリスのインドへの影響を弱めることも狙っていた。このような背景の中、アッコ包囲戦が計画されたのである。

包囲戦の展開

フランス軍は1799年3月20日に包囲を開始したが、ナポレオンは町がすぐに降伏するだろうと楽観視していた。最初の攻撃から数日後、イギリスの海軍指揮官ウィリアム・シドニー・スミスが率いる小艦隊が、トルコ側の防衛を助けるために援軍として到着した。スミスは、その制海権を利用し、フランス軍が使用するために運び込まれた大砲を奪い取るなど、フランス軍を牽制した。

フランス軍は、何度もアッコに対する攻撃を試みたが、そのたびにイギリス海軍と防衛側の攻撃を受けて撃退された。特に4月16日には、トルコの救援軍がフランス軍をタボル山で撃退したことが、攻囲の進展を大きく妨げた。その後、5月初めには対する防衛が一時崩れる場面もあったが、イギリスに支援されたトルコ軍の増援が到着したことで再びフランス軍は追い返された。

包囲が続く中、フランス軍は厳しい環境に置かれ、物資供給も途絶えがちとなり、甚大な兵士の死者を出す事態となった。特にペストが兵営を襲い、約2000人もの兵士が命を落とすことになった。ナポレオンは最終的な攻撃を5月10日に試みたものの、成功することはなく、攻囲が始まってからわずか2ヶ月後である5月21日に撤退を決断した。

アッコ包囲戦の意義

アッコ包囲戦は、ナポレオンにとって自らの戦略を見直すきっかけとなった出来事であった。戦後、ナポレオンは次のように自身の見解を述べている。「もし1799年にアッコを制圧していたら、私は東洋の帝王となり、パリへと戻ることができた」と。この言葉から、彼の戦略的視点と、アッコ包囲戦が逆に彼の運命を大きく変えたことが理解できる。アッコの失敗後、ナポレオンのエジプト・シリア戦役はその後の展開において混乱をきたし、彼の野望を大きく揺らす結果となった。

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