アッピアノス

アッピアノス（Ἀππιανός、95年頃 - 165年頃）は、2世紀のローマ帝国で活躍した歴史家です。彼はエジプトのアレクサンドリアで生まれ、ギリシャ人として育ちました。

若い頃には、116年にアレクサンドリアで発生したユダヤ人反乱を実際に目撃しています。この経験が彼の歴史観に何らかの影響を与えた可能性も考えられます。彼はエジプトで高位の地位に就き、その後、ローマ市民権と騎士の身分を与えられました。ローマでは皇帝の知遇を得て、国庫補佐官や元首属吏 (procurator) に任命されるなど、政治的にも重要な役割を担いました。これらの出来事は、アントニヌス・ピウス帝の時代頃と推測されています。

アッピアノスの最も重要な業績は、ギリシャ語で書かれた全24巻からなる大著『ローマ史』（Ῥωμαϊκά）です。この著作は、ローマの初期からウェスパシアヌス帝の時代までを網羅し、ローマと様々な民族との間の戦争を地域ごとに詳細に記述しています。また、ローマの内乱については、それぞれの指導者を中心に記述するという構成をとっています。

『ローマ史』の中でも、『内乱記』（Guerre Civili）は特に重要な部分であり、現在でも多くが残っています。しかし、残念ながら、全24巻のうち現存しているのは12巻のみで、残りの巻は部分的な引用によってのみ知られています。それでも、『ローマ史』は古代ローマの歴史を研究する上で非常に貴重な資料であり、アッピアノスの歴史家としての才能を示すものです。

アッピアノスの著作は、単なる歴史的事実の羅列ではなく、彼の独自の視点と解釈が反映されています。そのため、彼の著作を読むことで、古代ローマの社会や政治、文化に対する理解を深めることができます。彼の詳細な記述は、現代の歴史研究者にとっても重要な情報源となっています。

アッピアノスは、歴史家としてだけでなく、ローマ帝国の官僚としても活躍しました。彼の経験は、彼の著作に深みを与え、単なる文献資料とは異なる価値を生み出しています。彼の生涯と業績は、古代ローマの歴史を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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