アテュムニオス

アテュムニオス（古希: Ἀτύμνιος）という名前は、古代ギリシア神話において、異なる系譜に連なる複数の人物に付けられています。ここでは、特に知られている三人のアテュムニオスについて解説します。

カッシオペイアの子、アテュムニオス

一人目のアテュムニオスは、神々の王ゼウスとカッシオペイアの子として生まれた、類まれな美少年であったと伝えられています。彼の名は、クレーテー島に伝わるある有名な物語に関連して登場します。その物語とは、クレーテー島の支配者であった王ミーノースと、その兄弟であるサルペードーンが、ある美少年を巡って激しく対立したというものです。この争いは、美しい少年への愛情表現が独特であった当時のクレーテー島の社会風潮を示すエピソードとして語られます。一般的には、この兄弟が争奪の対象とした美少年はミーレートスであったとされることが多いのですが、異伝によれば、この兄弟の愛と対立の的となったのは、他ならぬこのゼウスの子アテュムニオスであったとも伝えられています。彼のその比類なき美しさが、強力な王権を持つ兄弟の間にも確執を生むほどであったことを示しています。

アミソーダロスの子、アテュムニオス

二人目のアテュムニオスは、小アジアのリュキア地方に縁のある人物です。彼の父アミソーダロスは、ギリシア神話に登場する最も恐ろしい怪物の一つであるキマイラを養育したことで知られています。アテュムニオスにはマリスという兄弟がおり、この兄弟は二人とも並外れた槍の腕前を持つ戦士でした。彼らは、古代ギリシア世界における最大の戦争とされるトロイア戦争において、リュキアの王サルペードーン（ゼウスの子サルペードーンとは別人）の指揮のもと、トロイア側についてアカイア軍と戦いました。彼らは勇猛に戦場を駆け巡りましたが、アカイア軍の中には、老練なプュロス王ネストールの子である勇敢な兄弟、アンティロコスとトラシュメーデースがいました。戦場で相まみえたアテュムニオスとマリスは、このネストールの子らとの激しい戦闘の末に討たれます。具体的には、兄であるアテュムニオスはアンティロコスによって、弟のマリスはトラシュメーデースによってそれぞれ討ち取られたとされており、異国の地トロイアでその短い生涯を終えました。彼らは父の怪物との関連とは対照的に、戦士としての武勇によってその名が神話に刻まれています。

エーマティオーンの子、アテュムニオス

三人目のアテュムニオスは、エーマティオーンと、泉のニュンペー（ニンフ）であるペーガシスの子として生まれました。彼もまた、広範囲の英雄や戦士が参加したあの有名なトロイア戦争に、トロイア側の勢力として参戦した人物の一人です。しかし、彼の戦場での活躍は長くは続かず、アカイア軍を率いる中でも特に傑出した知略家として名高い、イタケーの王オデュッセウスの手によって討ち取られてしまいます。オデュッセウスは単なる武力の持ち主ではなく、その狡猾さや策略によって多くの敵を打ち破った英雄であり、アテュムニオスは彼のような主要な英雄によって倒された脇役の一人として、神話の中でその名が語り継がれています。

このように、アテュムニオスという同一の名前は、出自も物語における役割も異なる複数の人物に用いられており、それぞれの伝承の中で異なる形でその存在が語られています。

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