アトリウム

アトリウムについて

アトリウム（atrium）は、ホテルや大型商業施設、オフィスビル、マンションなどの主要な建物内部に設けられる、開放感あふれる中庭風の空間を指します。多くの場合、アトリウムの上部にはガラスやアクリルパネルで作られた屋根が設けられ、自然光がふんだんに取り入れられる設計となっています。これにより、居心地の良い明るい空間が演出されるのです。

歴史的背景

アトリウムの起源は古代ローマにさかのぼります。当時のローマの邸宅では、居住空間の中心に位置する広間がありました。ここは、家族や訪問者が集う社交の場として利用され、床には大理石が敷かれていました。広間の中央には天窓（compluvium）があり、雨水を受け止める水盤（impluvium）がその下に設置されていました。このように、アトリウムにはコミュニティの重要な空間という役割が与えられていたのです。

近代においては、20世紀後半の建築においてエントランスホールの設計が進化し、壁や天井にガラスが使用された吹き抜けの開放的な空間が採用され、現代のアトリウムと呼ばれるスタイルが確立されました。

キリスト教建築におけるアトリウム

また、アトリウムの概念はキリスト教建築にも影響を与えました。初期キリスト教の教会建築では、バシリカ式が採用され、入り口前に展開した構造体がアトリウムと呼ばれていました。これは「洗礼志願者のための空間」として機能し、吹き抜けのある中庭とその周囲の回廊で構成されていました。このように、アトリウムは社交だけでなく宗教的な役割も持っていたのです。

現存するアトリウムとしては、ローマのサン・クレメンテ教会やミラノのサンタンブロージョ教会、サレルノのサレルノ大聖堂などが挙げられます。また、ドイツのマリア・ラーハ修道院やローマのサンタ・プラッセーデ聖堂などにもその名残を見ることができます。特に、16世紀に改修される以前のサン・ピエトロ大[[聖堂]]にもアトリウムの構造が存在していたことが知られています。

現代のアトリウム

今日では、アトリウムは都市部のビル群の中においても重要な役割を担っています。特定街区制度や総合設計制度に基づき、公共の場として設定されることも多く、ビルの中に現れるオアシスのような存在となっています。

このようにアトリウムは、歴史的背景を持ちながらも現代においても多様な用途で活用されている魅力的な空間であり、今後も様々な形で発展し続けることでしょう。

もう一度検索