アドウォルトン・ムーアの戦い

アドウォルトン・ムーアの戦い

アドウォルトン・ムーアの戦いは、1643年6月30日に第一次イングランド内戦中に勃発した、国王軍（王党派）と議会軍（議会派）の間の重要な戦闘です。この戦いは、イングランド北部における両勢力の力関係を大きく左右する結果となりました。

戦闘の背景

当時、イングランド北部ヨークシャーは、ニューカッスル伯ウィリアム・キャヴェンディッシュ率いる国王軍の圧力にさらされていました。議会軍は、この状況を打開するためにグロビーのグレイ卿トマス・グレイ、オリバー・クロムウェル、ジョン・ホタムらを派遣し、ノッティンガムに集結させました。しかし、ホタムが王党派と内通していたことが発覚し、6月18日に逮捕されてしまいます。ホタムは一時脱走するも、28日に父親のジョン・ホタムとともに再び捕らえられ、ロンドンへ護送されました。この事件は、議会軍内に深刻な不信感を生み、北部への救援活動が大幅に遅れる原因となりました。

一方、ブラッドフォードに駐屯していた議会軍司令官ファーディナンド・フェアファクス卿とその息子トーマス・フェアファクスは、ニューカッスル伯の国王軍が迫っているという報を受けました。ブラッドフォードが包囲されることを恐れたフェアファクス父子は、迎え撃つ決断をし、アドウォルトンの荒野で両軍は激突することになります。

戦闘の経過

戦場となったアドウォルトンの荒野は、沼地が多く、高地や生垣、小屋などは国王軍が占拠していました。当初、議会軍は士気が高く優勢に見えましたが、2倍以上の兵力を誇る国王軍に圧倒されていきます。さらに、国王軍の騎兵隊が生垣を迂回して議会軍の後衛を襲撃したことで、議会軍はパニックに陥り総崩れとなりました。フェアファクス父子はなんとかブラッドフォードに退却しますが、そこも放棄し、ハルへと逃れることになります。

ハルでは、市民がホタム父子を捕らえていたため、フェアファクス父子は市民に迎え入れられました。その後、トーマスは逃亡中にはぐれていた娘メアリーと再会し、王党派の捕虜となっていた妻アンも解放され、家族は再会を果たします。

戦闘の結果と影響

アドウォルトン・ムーアの戦いの結果、ハルを除くヨークシャーの大部分はニューカッスル伯率いる国王軍の支配下に入り、北部戦線における国王軍の優位が決定的なものとなりました。この戦いで議会軍の主力であった民兵の脆さが露呈し、議会軍は軍編成の改革が急務であると強く認識しました。この戦いは、後の議会軍の軍制改革、そして内戦の行方にも大きな影響を与えることになります。

参考文献

松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
サミュエル・ローソン・ガードナー著、小野雄一訳『大内乱史Ⅰ:ガーディナーのピューリタン革命史』三省堂書店、2011年。
* シセリー・ヴェロニカ・ウェッジウッド著、瀬原義生訳『イギリス・ピューリタン革命―王の戦争―』文理閣、2015年。

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