アドムファの庭園

クラーク・アシュトン・スミスが創造した終末世界ゾティークを舞台とする連作の一つ、『アドムファの庭園』は、彼の短編の中でも特に異様な雰囲気を放つ作品です。原題は「The Garden of Adompha」で、『ウィアード・テールズ』誌の1938年4月号に掲載されました。ヴァージル・フィンレイによる挿絵と共に、同誌の表紙を飾ったことでも知られています。スミスがしばしば得意とした、現実離れした植物の描写が極限まで推し進められた一作であり、冒頭には作中世界における聖典らしきものから「ルダルのタサイドンへの連祷」が引用されています。

物語の舞台は、ゾティークの東方に浮かぶ巨大な島ソタル。この地の統治者であるアドムファ王が所有する庭園は、王自身と彼の宮廷に仕える妖術師ドウェルラス以外、何人も立ち入ることが許されていません。庭園が完成して以降、王宮では不可解な毒殺事件や災難が頻発し、王やドウェルラスの寵を失った者たちが次々と姿を消すといった怪奇現象が相次ぎました。これらの出来事は様々な憶測を呼び、暗い噂が飛び交うようになりますが、その実態、特に庭園に隠された秘密を知る者は誰もいませんでした。

屋根で覆われた庭園の内部は、魔術によって作り出された擬似的な太陽によって照らされています。この血のような赤い光球は、妖術師ドウェルラスが七つの地獄を支配するという大悪魔タサイドンの領域から召喚したものだと噂されていました。この庭園では、地獄から持ち込まれた異形の植物に加え、さらに恐るべき試みがなされていました。それは、植物に人間の身体部位を接ぎ木して育てるという、おぞましい実験です。切り取られ、植物に接合された人体は、樹液を吸収して異形ながらも成長を続けるのです。

ある日、王は女奴隷トゥロネアーに目をつけます。彼女はあらゆる性愛の技に熟達していましたが、王は彼女自身ではなく、その「手」に強い執着を見せます。王はトゥロネアーを眠らせて仮死状態にし、彼女の手を植物に接ぎ木するようドウェルラスに命じます。「手だけ残せ、他はいらぬ」と。魔術師は彼女の手首を切り離すと、それを滑らかに枝に接合しました。性の快楽に満ちた思い出が詰まった手が、そのままの形で保存された様子を見た王は、深い満足に浸ります。残された胴体部は木の根元に埋めて肥料とするつもりでしたが、ドウェルラスはトゥロネアーの命を惜しむそぶりを見せます。この魔術師の様子に、ふと反感を覚えた王は、衝動のままに背後から鋤でドウェルラスを撲殺します。そして、王は魔術師の遺体とトゥロネアーの胴体を同じ穴に突き落とし、埋めてしまいます。千年以上生き、超人的な力を持つと恐れられていたドウェルラスを、あまりにもあっけなく倒せてしまったことに、王はかえって拍子抜けするのでした。

やがてドウェルラスの失踪は宮廷で話題となりますが、多くの者にとって彼は厄介な存在であったため、民衆はむしろ安堵の表情を見せます。この結果が、アドムファ王の力によるものなのか、それとも魔王タサイドンの介入によるものなのかで人々の意見は分かれましたが、いずれにせよ恐るべき妖術師が消え去ったことによって、王とタサイドンはこれまで以上に恐れられ、尊敬を集めることとなりました。

しかし、破滅は予期せぬ形で訪れます。ある夜、アドムファ王が一人で庭園に足を踏み入れた時、植物と融合した無数の人体部位が、まるで生きているかのように彼を取り囲みました。庭園を照らす制御球体は輝きと熱を増し、それによって活性化したキメラ植物たちは、犠牲者たちの手足や身体の一部を使って、復讐の念を込めてアドムファ王に襲いかかります。彼を掴み、引き裂くその恐ろしい惨劇の中、魔術師ドウェルラスの一部もまた復讐を果たしていました。皮肉にも、彼はトゥロネアーのほっそりとした指だけには、かつての愛人である王を愛撫させるという、歪んだ形で最期の仕打ちを与えるのでした。

主な登場人物：
アドムファ - ソタルの王。歪んだ嗜好を持ち、禁断の庭園を造らせる。
ドウェルラス - 千年以上生きるとされる強力な妖術師。庭園の管理を担い、王と共におぞましい実験を行う。
トゥロネアー - 性愛の技巧に熟達した女奴隷。王の欲望の対象となる。
タサイドン - 七つの地獄を支配すると言われる大悪魔。庭園の魔術と関わりを持つ。

本作の日本語訳は、主に以下の書籍に収録されています。
大瀧啓裕訳『ゾティーク幻妖怪異譚』創元推理文庫
安田均訳「アドンファの園」『魔術師の帝国1 ゾシーク篇』ナイトランド叢書
* 小倉多加志訳「アドンパの庭園」『呪われし地』アーカム・ハウス叢書

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