アドリアナ・カセロッティ

アドリアナ・カセロッティ：永遠の白雪姫

アドリアナ・カセロッティ（1916年5月6日-1997年1月19日）は、アメリカ合衆国コネチカット州出身の女優、歌手です。彼女のキャリアは、世界初の長編カラーアニメーション映画『白雪姫』（1937年）の主人公、白雪姫の声優を務めたことで決定づけられました。

カセロッティは、オペラ歌手の家系に生まれ、幼い頃から音楽に親しんで育ちました。姉も有名な歌手だったと言われています。ディズニーは『白雪姫』の主人公にふさわしい声を長らく探し求めていましたが、ある歌唱講師の助手を務めていたカセロッティの声を偶然耳にしたことで、その透明感と純粋さに魅了され、白雪姫役に抜擢しました。

映画の中でカセロッティは、「私の願い」や「いつか王子様が」といった劇中歌を含む白雪姫の繊細な感情表現を見事に演じきりました。彼女の演技と歌声は、白雪姫というキャラクターに命を吹き込み、世界中の人々の心を掴みました。『白雪姫』の大成功は、彼女の貢献なしには語れないでしょう。当時、彼女は970ドルという出演料を受け取っています。映画は、第38回アカデミー作曲賞と第39回アカデミー特別賞を受賞するなど、高い評価を獲得しました。

しかし、カセロッティの芸能活動は、『白雪姫』以降は目立ったものとはなりませんでした。『オズの魔法使』『素晴らしき哉、人生!』といった作品にも出演していますが、いずれもクレジットなし、または小さな役柄に留まりました。これは、当時『白雪姫』自体がクレジット無しだったことや、ディズニー社が、カセロッティの「白雪姫」のイメージを守るため、彼女が出演する作品を厳しく選別していたことなどが影響したと考えられます。

有名な逸話として、コメディアンのジャック・ベニーが、カセロッティを自身のラジオ番組に招きたいとディズニー社に依頼したところ、「白雪姫のイメージを損なわないよう、出演はご遠慮願いたい」と断られたというエピソードがあります。このエピソードは、カセロッティの演技がいかに高い評価を受けていたか、そしてディズニー社が彼女をいかに大切に考えていたかを物語っています。

その後も、カセロッティは活動を続けました。1972年には、ジュリー・アンドリュース司会のTV番組『ジュリー・アンドリュース・アワー』に出演し、アンドリュースと共に「私の願い」や「いつか王子様が」を歌唱するなど、忘れかけていた輝きを再び見せつけました。また、マイク・ダグラス司会の『マイク・ダグラス・ショー』にも出演するなど、徐々に活動を再開しています。さらに、歌の手引書「Do You Like to Sing?」を執筆するなど、歌手としての才能を生かした活動にも取り組んでいました。

私生活では4度の結婚と離婚を経験しました。晩年は独身でした。1997年1月19日、肺がんのためカリフォルニア州ロサンゼルスで死去しました。80歳でした。1994年には、ディズニー・レジェンドにも選ばれ、ディズニーの歴史に名を残す存在となっています。彼女の透明感のある声と、純粋な白雪姫像は、人々の記憶の中に今も鮮やかに残っています。

もう一度検索