アドルフ・フレドリク (スウェーデン王)

アドルフ・フレドリク：スウェーデン「自由の時代」の国王

アドルフ・フレドリク（1710年5月14日 - 1771年2月12日）は、スウェーデン王国のホルシュタイン＝ゴットルプ朝の初代国王（在位：1751年 - 1771年）として知られています。彼の治世は、スウェーデンの歴史において「自由の時代」と呼ばれる一方で、国家の危機が顕在化した時代でもありました。複雑な国内政治、大国ロシアの圧力、そして王妃との関係など、アドルフ・フレドリクの生涯は数々の出来事に彩られています。

皇室と出自

アドルフ・フレドリクは、ホルシュタイン＝ゴットルプ家の公子として生まれました。父はリューベック領主司教のクリスティアン・アウグスト、母はバーデン＝ドゥルラハ辺境伯の娘アルベルティーナ・フリーデリケです。母方の家系には、スウェーデン王カール10世の姉がおり、スウェーデン王室と血縁関係を持っていました。兄のカール・アウグストはリューベック領主司教を務めましたが若くして亡くなり、弟のフレデリク・アウグストは後にオルデンブルク公となりました。また、アドルフ・フレドリクにはロシア皇后となった姪がいました。彼女は妹の娘ゾフィー・アウグスタ・フレデリーケであり、のちにエカチェリーナ2世としてロシア皇帝の座に就きました。従兄の子であるピョートル3世もまたロシア皇帝となったことから、アドルフ・フレドリクの家族はロシア帝国と複雑な繋がりを持っていたことがわかります。

スウェーデンの政治状況と国王の立場

アドルフ・フレドリクが王位に就いたスウェーデンは、大北方戦争後の疲弊から脱しきれず、政治は有力貴族によって牛耳られていました。主要な勢力として、親ロシア派のメッソナ党と親西欧派のハッタナ党が対立を続け、両党とも欧州列強からの資金援助を受けていました。この「自由の時代」は、貴族による政治支配と、列強による干渉が入り混じった不安定な時代でした。

アドルフ・フレドリクは、1751年にハッタナ党の支援を受けて即位しましたが、国王としての権力は限定されていました。政治の実権はハッタナ党が握っており、国王は名目上の存在に過ぎませんでした。彼は、プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム1世の娘であるロヴィーサ・ウルリカと結婚し、グスタフ3世やカール13世らの子をもうけました。ロヴィーサ・ウルリカは王権強化を目指してクーデターを企てましたが失敗し、アドルフ・フレドリクと共に議会から厳しく警告されました。国王は王妃に主導権を握られ、政治への関与は限られていました。

ハッタナ党、メッソナ党、そしてロシア

ハッタナ党はフランスからの資金援助を受けており、七年戦争ではフランス側に与して参戦しました。敗戦によって財政難に陥ったハッタナ党は1765年に失脚し、メッソナ党が政権を握ります。メッソナ党は改革を試みましたが、ロシアからの資金援助を受けていたため、ロシアの強い影響下に置かれ、スウェーデンの主権は著しく弱体化しました。しかし、経済不況を招いたことで1769年に失脚し、ハッタナ党が政権を取り戻します。こうして、両党の対立は激しさを増し、スウェーデンの政治はますます腐敗していきました。

この時代、スウェーデンはロシア帝国の圧倒的な力の前で、従属国のような立場にありました。デンマークもロシアと友好関係を結び、スウェーデンの分割を企てていました。国内は混乱し、王権は弱体化し、国家の危機は深まりました。

アドルフ・フレドリクの死とその後

1771年2月12日、アドルフ・フレドリクは消化不良により亡くなりました。彼の死は、「自由の時代」の終焉を告げるとともに、国民の間に王権復活への強い願望を生み出しました。後を継いだ息子のグスタフ3世は、この時代の流れを受け、王権強化を目指して行動を起こすことになります。

人物像とその他

アドルフ・フレドリクは、1762年にフリーメイソンにも加入しており、スウェーデン・フリーメイソンの保護者の称号を得ています。彼は晩餐会でロブスターやキャビア、ザワークラウト、燻製ニシンなどをシャンパンと共に大量に食し、さらにデザートに「ヘートヴェッグ」を14人前も食べたと伝えられています。

彼の生涯は、スウェーデンの激動期を象徴するものでした。王権の弱体化、貴族政治、列強の干渉、そして王妃との複雑な関係など、彼の治世は多くの課題を抱えていました。彼の死後、息子のグスタフ3世による王権強化の動きが本格化し、スウェーデンの歴史は新たな局面を迎えることになります。

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