アニュイ川

アニュイ川は、ロシア連邦ハバロフスク地方を流れるアムール川の右支流であり、その全長は393km、流域面積は12,700平方キロ[[メートル]]に及びます。シホテ・アリン山脈を源流とし、主にハバロフスク地方を流れ、ナナイスク地区のナイヒン村付近でアムール川本流に合流します。満州語ではドンドン川、漢語では敦敦河と呼ばれていましたが、現代中国語では阿紐伊河と表記されています。

アニュイ川の流域には、マノマ川（198km）をはじめ、トルマス川（75km）、ゴビリ川（97km）、ポディ川（70km）、ディムニ川（61km）など、多くの支流が存在します。これらの支流もまた、アニュイ川の豊かな水量を支える重要な役割を果たしています。

歴史的に見ると、アニュイ川は古くからナナイ族の居住地域でした。16世紀から17世紀にかけてこの地域を支配していた清朝の記録には、ゲイケレ（現在のゲイケル氏族）、フスハラ（現在のバサル/ブスハル氏族）、ジャクスル（現在のザクソル/ジャクソル氏族）といったナナイ族の氏族が、アニュイ川流域に居住していたことが記されています。興味深いことに、アムール川上流域に居住していた民族は、18世紀の清朝による強制移住政策によってその構成が大きく変わってしまいましたが、アニュイ川流域の住民は、この強制移住の影響を大きく受けることはありませんでした。この事実は、アニュイ川流域が独自の文化と社会構造を維持してきたことを示唆しています。

アニュイ川は、その歴史的背景、地理的な特徴、そしてそこに暮らす人々の生活を通して、この地域の自然と文化を今に伝える重要な存在と言えるでしょう。特に、先住民であるナナイ族の文化は、アニュイ川と深く結びついており、彼らの生活様式や伝統は、今もなお、この川の恵みと共に息づいています。アニュイ川は、ただの川ではなく、歴史と文化を繋ぐ生命線であり、地域の人々にとってかけがえのない存在なのです。

参考文献

承志『ダイチン･グルンとその時代』名古屋大学出版会、2009年
松浦茂『清朝のアムール政策と少数民族』京都大学学術出版会、2006年

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