アムール川

アムール川について

アムール川（ロシア語：Амур、中国語：黑龙江）は、ユーラシア大陸北東部を流れ、ロシアと中国の国境を形成している重要な河川です。全長は4,368kmあり、世界の河川の中で8位にランク付けされています。また、流域面積は185万5500km²であり、世界で10位の広さを持っています。

地理的な特徴

アムール川は、モンゴル高原の東端、ロシアと中国の国境に位置するシルカ川とアルグン川の合流点から始まります。中流部では中国の黒竜江省とロシアの極東地方との境界線を形成し、最終的にはオホーツク海のアムール・リマンに注ぎます。このリマンは川の河口を指し、さらに日本海の流れに影響を与える海流とも関連しています。

周辺の環境は豊かで、特にゼヤ川とブレヤ川の氾濫原、ヒンガンスキー自然保護区、三江平原などはラムサール条約に登録された重要なエリアです。これらの地域は、多様な生態系を育み、数多くの動植物が生息しています。

流域の都市

アムール川は、ロシア側のアムール州やユダヤ自治州、ハバロフスク地方と中国側の黒竜江省との国境を示しています。沿岸には重要な都市が点在しており、例えばロシアのブラゴヴェシチェンスク、ハバロフスク、コムソモリスク・ナ・アムーレ、ニコラエフスク・ナ・アムーレ、中国の黒河市、同江市などがあります。

産業と環境問題

豊かな水産資源も重要な特徴であり、アムール川はサケ類をはじめとして多くの水産物に恵まれています。これにより北海道のオホーツク海沿岸地域は良好な漁場として知られています。しかし、2005年の中国吉林省での化学工場爆発事故により、支流の松花江が汚染されたことがあり、アムール川周辺でも深刻な環境問題が指摘されています。ロシア側の住民はこの状況を憂慮しており、日本でも警戒が強まっています。

歴史的経緯

アムール川には長い歴史があります。古代中国の王朝では「黒水」「弱水」などと呼ばれていましたが、13世紀の『遼史』で初めて「黒竜江」という名称が記録されています。また、満洲語での呼称は「サハリャン・ウラ」とされ、モンゴル語では「ハラムレン」、ロシア語では「アムール」と呼ばれ、これが国際的な通称となっています。

女真族（満洲人）は、アムール川を利用して流域の民族と交易を行っていましたが、次第にロシア人の進出に伴い、領土を巡る争いが発生しました。17世紀にはロシアの探検隊がこの地域に侵入し、清とロシアの間で紛争が起こりました。1689年にはネルチンスク条約により、上流の一部が清の領土として定められることに。

その後、清が弱体化するにつれてロシアは再びアムール川沿岸に目を向け、1858年のアイグン条約や1860年の北京条約により、現在の国境線が決定されました。さらに、1969年には中ソ国境紛争が発生しましたが、2004年に両国は国境を確定させ、対立は沈静化しました。

洪水とその影響

2013年からはアムール川の流域で多雨により洪水が発生しました。この中で、ハバロフスクでは908cmの水位が記録され、これまでの最高水位を超える事態となりました。これらの自然災害は、流域の環境や周囲の住民の生活に大きな影響を与えています。

支流

アムール川には多くの支流が存在し、下流から順にアムグン川、ニメレン川、ゴリン川などが流れ込んでいます。これらの支流も重要な河川であり、それぞれ独自の生態系や文化を持っています。特に、各支流の水質や生物多様性の保護が重要な課題となっています。

アムール川は、自然環境だけでなく、人々の生活や文化にも深く関わる重要な河川であり、その保護と持続可能な利用が求められています。

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