アノーチャ・パンジョイ

アノーチャ・パンジョイ - 拉致されたタイ出身の女性

アノーチャ・パンジョイは、1955年にタイのチエンマイ県で生まれました。彼女の父は朝鮮戦争の退役軍人であり、母親は早くに亡くなっています。幼少期を祖父母と過ごし、高校を卒業後、より良い仕事を求めてバンコクへ移住し、その後マカオに渡ります。そこでマッサージセラピストとしての仕事に従事していた彼女は、1978年7月2日、北朝鮮の工作員によって拉致されました。

事件の経緯は、パンジョイが観光客に誘われてボートツアーに参加するところから始まります。彼女はそのツアー中に襲われ、無理やり拉致されて北朝鮮に連行されました。パンジョイは自身の経験について語っており、連れ去られる際の恐怖や、拉致後の行動について詳細に述べています。

拉致後、パンジョイは北朝鮮でアメリカ人脱走兵ラリー・アレン・アブシャーと出会い、1978年末頃に結婚。北朝鮮当局は、彼女の生活を安定させるためにアブシャーとの同居を勧めました。パンジョイは1983年にアブシャーを失いますが、その後も彼女はジェンキンス夫妻と親しい交友を続けました。

北朝鮮での生活は彼女にとって辛いものでしたが、彼女はジェンキンス夫妻と近しく、タイへの帰郷を強く希望していたと言われています。時が経ち、パンジョイは1989年に東ドイツ出身の工作員と再婚しましたが、そこでの生活も長続きしませんでした。

2000年代に入り、彼女の存在が再び注目されることになります。アメリカの脱走兵チャールズ・ジェンキンスが北朝鮮に滞在中、パンジョイが生きているとの情報を得たことで、彼女の家族は再び期待を持ち始めます。特に2005年、パンジョイの兄が彼女の存在を確認したことが大きなニュースとなり、ここを契機に家族の救出活動が本格化します。

兄は、パンジョイが生存しているという証拠を集め、何度も日本に足を運びました。さらには、故郷のチエンマイで写真展を開催し、彼女の事件に対する関心を高める努力を続けました。

2011年に金正日が亡くなったことがきっかけで、国家間交渉が進展する期待も浮上しましたが、北朝鮮はパンジョイの拉致を否定し続けています。彼女の家族は、真実を求める活動を続け、北朝鮮による拉致問題に対する理解を深めることを目指しています。

アノーチャ・パンジョイの物語は、日本国内外における拉致問題の重要さを示す一例であり、未だ多くの人々がその真実の解明を望んでいます。

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