アバディーン・アンガス

アバディーン・アンガスは、スコットランド東部のアバディーンシャーとアンガス地方を原産とする肉牛の品種です。一般的にはアンガス牛、またはアンガスビーフとも呼ばれています。

歴史と特徴

アバディーン・アンガスの歴史は古く、13世紀にはその存在が記録されています。1820年には品種登録が開始されました。この品種の大きな特徴は、黒単色で無角であること、そして小型であることです。成熟した雌牛で体高約125cm、体重約550kg、雄牛で体高約135cm、体重約800kg程度です。枝肉歩留まりを重視して改良されたため、四肢が短く、全体的にコンパクトな体型をしています。また、1日あたりの増体量は約800g、枝肉歩留まりは72%と、優れた産肉能力を持っています。環境への適応力も高く、飼育しやすい品種です。

肉質と利用

アンガス牛の肉は柔らかく、霜降りの入りが良いことで知られています。この肉質が、それまで煮込み料理が中心だった牛肉料理に、ステーキのような焼き料理を普及させるきっかけとなりました。ただし、柔らかい肉質を得るためには、牧草だけでなく大量の穀物飼料が必要となり、1kg増体させるためには約8kgの飼料が必要となります。

アンガス牛は主に食用として利用されており、その牛肉は多くの市場で流通しています。特に、霜降りの外観は高級牛肉として高く評価されています。また、アンガス牛は、難産のリスクを減らすために交雑育種にも用いられます。短角の遺伝子が優性であるため、短角の仔牛を得る目的で交配されることもあります。

アメリカにおけるアンガスビーフ

2000年代初頭から、アメリカのファーストフード業界はアンガス牛肉の品質を宣伝するキャンペーンを展開しました。マクドナルドは、2009年から全米でアンガス牛肉を使用したハンバーガーの販売を開始しました。オーストラリアのマクドナルドも、オーストラリア産アンガス牛を使ったハンバーガーを販売しています。

アメリカン・アンガス協会（AAA）は、1978年に「認定アンガスビーフ（CAB）」規格を制定しました。この規格は、アンガスビーフが他の品種よりも高品質であるという考えを広めることを目的としています。CABに認定されるためには、以下の10項目の厳しい基準を満たす必要があります。

1. 適度以上の霜降り
2. 中または細かい霜降りの肌理
3. 月齢30ヶ月未満の成熟度「A」
4. リブロース面積が約65～103cm2
5. 体重約476kg以下の枝肉重量
6. 外側脂肪厚が約2.5cm未満
7. 優れた筋肉質、乳用牛の影響を制限
8. 毛細血管の破裂が少ない
9. ダークカッターの排除
10. 首のこぶが約5cm未満

これらの基準を満たすのは、アンガス牛全体の2割弱とされています。

日本での展開

日本には1916年に初めてスコットランドから輸入されましたが、その後途絶えました。1961年にアメリカから再輸入され、北海道、岩手、青森で約1500頭まで増えたと報告されています。

アンガス牛は、その優れた肉質と飼育のしやすさから、世界中で広く飼育されている品種です。特にアメリカでは、CAB規格によって高品質なアンガスビーフのブランドが確立され、高級牛肉として認知されています。

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