アパフィ・ミハーイ1世

アパフィ・ミハーイ1世：動乱の時代のトランシルヴァニア公

アパフィ・ミハーイ1世（1632年 - 1690年4月15日）は、17世紀のトランシルヴァニア公として、激動の時代を生きました。彼の公としての道のりは、ハプスブルク帝国とオスマン帝国の勢力争い、そしてトランシルヴァニア内部の政治的駆け引きに翻弄されるものでした。

オスマン帝国の傀儡としての即位

アパフィの即位は、トランシルヴァニア公の地位を巡る内部対立と外部からの干渉が複雑に絡み合った結果でした。ハプスブルク帝国が支持するケメーニ・ヤーノシュに対抗するため、トランシルヴァニアの貴族たちは1661年9月14日にアパフィを公として擁立し、オスマン帝国の支持を得ることに成功します。翌1662年にケメーニが死去したことで、アパフィは唯一の公となり、権力を掌握しました。

しかし、その即位の経緯から、アパフィはオスマン帝国の傀儡としての立場を強いられます。オスマン帝国の後ろ盾を得て、神聖ローマ皇帝レオポルト1世と対立し、1683年の第二次ウィーン包囲でオスマン帝国が敗北するまでは、帝国と連携してハプスブルク家に対抗するハンガリーの反乱分子（テケリ・イムレなど）を支援しました。

ハプスブルク家との交渉と権威の維持

しかし、第二次ウィーン包囲以降、オスマン帝国が劣勢に傾くと、アパフィは生き残りをかけ、レオポルト1世との交渉を開始します。1687年9月29日、彼はレオポルト1世との間で協定を結び、トランシルヴァニアにおける自身の権威を認めてもらうことに成功しました。これは、時代の変化を敏感に察知し、自らの立場を維持するための現実的な判断でした。

死とその後

1690年、アパフィは公国の首都セーケシュフェヘールヴァールで58歳で死去しました。彼の死後、息子の アパフィ・ミハーイ2世が後を継ぎましたが、その治世は長くは続きませんでした。オスマン帝国はテケリ・イムレをトランシルヴァニア公に指名し、アパフィ・ミハーイ2世はレオポルト1世の保護下に置かれたため、実質的な権力を持つことはありませんでした。2年後、ハプスブルク家によって廃位され、トランシルヴァニアはハプスブルク家の領土に組み込まれることになります。

アパフィ・ミハーイ1世の生涯は、トランシルヴァニアが置かれた複雑な国際関係と、その中で自らの立場を維持しようとした君主の苦悩を象徴しています。オスマン帝国の傀儡として擁立されながらも、状況の変化に応じてハプスブルク家との交渉を行い、一時的に権威を維持した彼の政治手腕は、評価が分かれるところです。しかし、彼の時代はトランシルヴァニアの歴史における重要な転換点であり、その影響は後世にまで及んでいます。

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