アビエイ

アビエイ（Abyei）とは

アビエイは、アフリカ北東部、スーダンと南スーダンの国境に位置する地域です。両国が領有権を主張しており、帰属が未確定のまま、紛争の火種を抱えています。

地理・歴史的背景

アビエイは、1905年に定められたディンカ族のンゴック氏族の居住地を境界としています。この地域には、伝統的に農耕を営むンゴック氏族と、遊牧民であるアラブ系のミッセリア族が居住してきました。かつては友好的な関係を築いていた両民族ですが、第一次スーダン内戦を経て関係が悪化。ンゴック氏は南部スーダン、ミッセリア族は北部スーダンを支持するようになり、対立が深まりました。

紛争の歴史

1972年のアディスアベバ合意では、アビエイ地域の帰属を住民投票で決定する予定でしたが、実施されませんでした。1975年に油田が発見されると、北部政府は油田地帯を組み入れるため、地域区分の組み替えを開始。これが更なる紛争の火種となり、第二次スーダン内戦へと発展しました。和平合意後も、アビエイの地位を巡る対立は解消されず、2007年以降は武力衝突も頻発しています。

現状と課題

2005年の包括和平協定 (CPA) により、アビエイは両国の一部として扱われ、事実上の共同主権地となっています。両国から選出された議員による執行評議会が統治を行っていますが、住民投票の実施は依然として見通せていません。また、国際連合アビエイ暫定治安部隊（UNISFA）が展開し、治安維持に当たっています。

アビエイ問題は、南北スーダンの和平プロセス全体に影響を与える重要な課題です。資源を巡る対立、民族間の対立、外部からの干渉など、様々な要因が複雑に絡み合っており、解決は容易ではありません。国際社会の協力のもと、住民の意思を尊重した平和的な解決策を見出すことが求められています。

原油埋蔵量と生産

アビエイ地域はムグラド盆地に位置し、豊富な原油埋蔵量が確認されています。1990年代以降、石油開発が進み、スーダンの原油生産の重要な拠点となりました。大ナイル石油パイプラインを通じて、原油は紅海沿岸のポートスーダンまで輸送されています。

平和協定上の取り決め

包括和平協定 (CPA) において、アビエイ地域の地位は最重要課題の一つでした。SPLA（スーダン人民解放軍）は、アビエイ、ヌバ山地、青ナイルを含む地域での住民投票の実施を求めましたが、北部政府はこれらの地域の北部への帰属を主張しました。最終的に、アビエイ地域の帰属は住民投票によって決定されることになりましたが、住民の定義を巡る対立から、住民投票は実施されていません。

2007年12月以降の暴動

2007年12月以降、アビエイ地域ではSPLAとミッセリア戦闘員の間で武力衝突が頻発し、多数の死傷者が出ています。2011年には、北部政府軍がアビエイ地域を制圧。2012年には、南スーダン軍が油田地帯に侵攻するなど、紛争が激化しました。

アビエイの今後

アビエイ地域の将来は、依然として不透明です。住民投票の実施、境界線の確定、資源の分配など、解決すべき課題が山積しています。関係各国、国際社会が協力し、和平に向けた努力を続けることが不可欠です。

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