ディンカ族

ディンカ族：ナイル川流域に生きる高身長の民族

ディンカ族は、南スーダンのバハル・アル・ガザール地方を中心に居住する民族です。人口は約100万人で、自らをジエン（Jieng、単数形: Muonyjang）と称します。彼らは、世界で最も平均身長が高い部族として知られています。

生活と社会

ディンカ族は、乾期には河川近郊で放牧を行い、雨期にはサバンナでキビやヒエなどを栽培する半農半牧の生活を営んでいます。1000人から3万人程度の部族集落を形成し、さらに10の亜部族（Atuot, Aliab, Bor, Chiej, Agar, Gok, Rek, Twij, Malual, Ngok）に分かれています。亜部族ごとに社会的風習や文化的慣習が異なり、氏族制度も父系クラン、司祭クラン、戦士クランなど多様です。政治的にはヌエル族と敵対関係にあります。

言語

ディンカ語は、ナイル・サハラ語族に属し、ヌエル語やルオ語などのナイロート諸語と近い関係にあります。居住地域が広範囲に及ぶため、方言の差が大きいのが特徴です。

歴史

1983年から始まった第二次スーダン内戦中、スーダン南部はディンカ族出身でキリスト教徒のジョン・ガランが率いるスーダン人民解放軍の勢力圏でした。しかし、軍事政権のオマル・アル＝バシールがイスラム法シャリーアを導入しようとしたため、アラブ系住民による黒人への人種差別と宗教対立が激化しました。この内戦で、ヌエル族とディンカ族の子どもたち約2万人が家を追われ、スーダンのロストボーイズと呼ばれる集団避難民となりました。

1991年11月15日には、スーダン（現南スーダン）南部のジョングレイ州ボルで、ヌエル族のリエック・マチャルによるディンカ族虐殺事件が起こりました。さらに、2013年の南スーダンクーデター未遂事件では、ヌエル族のリエック・マチャル前副大統領が蜂起し、武力衝突を通じてディンカ族がヌエル族の住民を殺害するなどの抗争が発生しました。

著名人

ディンカ族出身の著名人には、以下のような人物がいます。

アレック・ウェック - ファッションモデル
マヌート・ボル - バスケットボール選手
ルオル・デン - バスケットボール選手
ソン・メイカー - バスケットボール選手
ボル・ボル - バスケットボール選手
サルバ・キール・マヤルディ - 南スーダン初代大統領（2011年-）

まとめ

ディンカ族は、南スーダンのナイル川流域で独自の文化を育み、厳しい環境の中で生き抜いてきた民族です。しかし、内戦や民族間の対立など、多くの困難に直面してきました。彼らの歴史と文化を理解することは、南スーダンの現状を知る上で重要な意味を持ちます。

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