アビジン

アビジンの概要

アビジン（Avidin）は、主に鳥類や爬虫類、さらに両生類の卵管で生産される特異な四量体型のビオチン結合タンパク質です。主に卵白に蓄積され、その含有率は鶏卵の白身で約0.05%に相当します。このタンパク質は、4つの同一サブユニットから構成され、各サブユニットがビオチン（ビタミンB7）を非常に高い親和性で結合します。アビジンとビオチンの解離定数（Kd）はおおよそ10^{-15} Mとされ、知られている非共有結合の中でも最も強いものの一つです。アビジンの分子量はおおよそ66-69 kDaで、糖鎖が10%を占めるという特徴があります。

アビジンの機能

アビジンの自然な機能については完全には理解されていませんが、ビオチンに結合することで細菌の成長を阻害する因子として働くと考えられています。この仮説を裏付けるための証拠として、ストレプトアビジンと呼ばれる類似のタンパク質がストレプトマイセス属の細菌によって生成され、これが抗生物質のように細菌の成長を抑制する役割を担うことが挙げられます。

アビジンは調理によってビオチンに対する親和性が失われるため、その機能を保持するためには生卵として摂取することが前提となります。

アビジンの発見

アビジンはエズモンド・エマーソン・スネルによって最初に単離されました。彼がこのタンパク質に注目したのは、鶏が生卵白を食べた際にビオチンが存在しているにもかかわらずビオチン不足を示すことからでした。この発見を基にスネルは実験的にビオチン結合のメカニズムを明らかにし、後に単離したこの蛋白質がビオチン欠乏症の原因であることを証明しました。最初は「avidalbumin」と名付けられましたが、後にその特異な親和性にちなんで「avidin」と改名されました。

ビオチンとの関係

ビオチンは腸内細菌によって生産されるため、かつての科学者たちは人間がビオチン不足になることはないと信じていましたが、最近の研究では腸内細菌のバランスを崩す抗生物質の使用などでビオチン不足の症例が見られるようになりました。アビジンは非常に強力なビオチン結合タンパク質であり、そのために生卵白の摂取がビオチンの吸収を妨げることが示されています。特にビオチンが重要とされる状況においては、その影響を軽減するために注意が必要です。

アビジンの応用

アビジンとビオチンの強い親和性は、さまざまな研究の分野で利用されています。その結合力は通常の抗原抗体反応の100万倍以上に達し、医学や生物学の研究における強力なツールとなっています。具体的には、抗体や薬物をターゲット細胞に精密に結合させる技術として活用されています。また、修飾が加えられた脱グリコシル化アビジンである「ニュートラアビジン」などの改良型も開発され、より利用しやすい形式が販売されています。これらは、特に非特異的結合の問題を軽減し、研究や診断の効率を向上させる役割を果たします。

まとめ

アビジンは、単に生理学的な役割を持つだけでなく、その特異な性質からも広範な応用がされています。特にビオチンとの結合力の強さやその逆性共を利用した研究は、今後の医学やバイオテクノロジーの発展に貢献していくことでしょう。

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