アビックグループ

アビックグループは、1966年12月に設立されたソニー株式会社の完全子会社（後にソニーマーケティンググループに所属）であった電気店グループです。主にソニーが製造・販売する様々な製品を取り扱いました。テレビやビデオ、DVDなどのハードウェア、関連ソフトウェア、オーディオアクセサリー、業務用機器に加え、プレイステーションや携帯電話など、一般消費者向けの幅広いソニー製品を提供していました。

その設立の背景には、ソニー製品の販売を一般的な家電量販店に委ねるだけでなく、自社の手で製品のコンセプトや魅力を正確に伝え、その価値を最大限に引き出すという強い意向がありました。この理念に基づき、2000年代に入ると、水面下で直営店戦略の検討を進めていました。また、インターネット販売にも積極的に取り組み、1998年頃から2005年頃にかけては楽天市場に「A-net」という店舗を出店。全国のオンラインに強いソニーショップで構成された「e-SonyShop」（VAIOのカスタマイズモデルなどが購入可能だったネットワーク）においては、中心的な役割を担いました。ソニーの家庭用ロボットであるaiboが初めて発売された際には、リアル店舗としてはアビック銀座ソニービル店が唯一の購入窓口となるなど、特別な位置づけを担うこともありました。

革新的な取り組みも行われ、2008年にはそれまでヨーロッパで展開されていた「ソニーセンター」を国内で初めて導入し、高円寺と仙台市に開設しました。このように、最後まで新しい販売手法や店舗形態の模索を続けました。一方で、グループは「ソニー」のブランド名を冠せずに運営されていましたが、これは当時の日本の商習慣において、メーカーが自ら直販ルートを持つことが既存の販売店ネットワークの運営上、必ずしも得策とされていなかったためです。

アビックグループは、一般消費者向けの販売に加え、ソニーグループ内の社員販売も担当していました。旧ソニー本社を含む各事業所内には「アビック・コーセイ」という店舗を構え、社内向けのサービスを提供していました。しかし、地域家電店としてソニー製品のみで独立採算を維持することは次第に困難になっていきました。また、Apple Storeのようなメーカー直販店の成功事例が登場し、日本国内でもメーカーが自社ブランドの直営店を展開することへの抵抗感が薄れてきた時代の流れもありました。

こうした状況下、経営体質の改善が進まなかったアビックグループは、ソニーがソニーストアを本格的に展開する方針を固めたことに伴い、閉鎖が決定されました。2010年7月31日をもって、全国に展開していた9店舗すべてが閉店しました。多くの顧客はソニーストアに引き継がれ、一部の従業員もソニーストアに移籍しました。

会社の再編

アビックグループは、2000年頃に行われたソニーマーケティングによる販売会社再編を経て形成されました。この再編では、地方拠点ごとに運営されていたサンライフ、アビック、ソニック、コールといったソニー専門販売会社に加え、法人向け販社のアビックシステム（後の共信コミュニケーションズ）などが統合されました。

再編前の各社にはそれぞれ特徴がありました。サンライフは白物家電も扱う地域密着型の家電店、前身の「アビック (AVIC)」や「ソニック」はソニー製品に特化した専門店の性格が強い会社でした。「コール (CALL)」はバブル経済期に地方で展開されたソニーのコンセプトストアで、「Culture（文化）、Consulting（コンサルティング）、Communication（コミュニケーション）」という3つの要素（ALL）を網羅するソニーの交流空間という意味合いを持っていました。コールは現在も一部法人が運営を継続しています。

前身アビックの設立

アビックの起源をさらに遡ると、ソニー株式会社の創業初期に、ソニーから独立した数名の有志によって設立されたことに辿り着きます。彼らの当初の目的は、自分たちが開発した製品を自らの手で消費者に届ける販売チャネルを構築することでした。

閉店時の店舗（全国9店舗）

コール仙台泉店（ソニーセンター・コール仙台泉店）
阿佐ヶ谷店
高円寺店（ソニーセンター・アビック高円寺店）
下北沢店（後期はアウトレット製品も取り扱い）
銀座ソニービル店（後期は主に海外顧客向けのツーリスト製品を取り扱い）
名古屋駅前店（主に海外顧客向けのツーリスト製品）
中部国際空港店（主に海外顧客向けのツーリスト製品）
日本橋店（大阪）（2Fに一眼レフカメラαシリーズ専門フロア設置）
* 関西空港店（主に海外顧客向けのツーリスト製品）

過去に存在した主な店舗

自由が丘店、横浜ジョイナス店、上永谷店、河原町店、コール釧路店、吉祥寺店、玉川高島屋店、新橋デジタル館、名古屋デジタル館（デジック）、第一アメ横店、第二アメ横店、中野店、有楽町店、コール宇都宮店、コール富山店、コール高岡店、八重洲店（通信館）、天神地下街店、アビック・コーセイ（ソニー各事業所内）など多数の店舗が存在しました。

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