アファル人

アファル人：砂漠に生きる民族

アファル人（Afar people）は、ダナキル人とも呼ばれ、主にエリトリア南部、エチオピア北東部、ジブチ西部に居住する民族です。その人口は約244万人にのぼります。

生活と文化

アファル人は、ダナキル砂漠を中心とした乾燥地域に多く居住し、厳しい環境の中で独自の生活様式を築いてきました。主な生業は、ヤギ、ヒツジ、ウシなどの家畜を飼育する遊牧と、ダナキル砂漠やアッサル湖での塩の採掘、そしてその塩を運搬することです。彼らは、乾燥地帯に適応した生活技術を持ち、自然の恵みを最大限に活用しながら生きています。

エチオピアにおけるアファル人

アファル人が最も多く居住するのはエチオピアですが、同国では人口の多いアムハラ人が政治的な影響力を持っており、アファル人が政治の主導権を握ることはありませんでした。しかし、1995年にエチオピアの州が民族ごとに再編されると、北東部に集住するアファル人にはアファール州という独自の州が与えられました。アファール州内のアファル人の割合は9割を占めており、一定の自治権を持つことが可能になりました。

エリトリアとジブチにおけるアファル人

エリトリアでは、アファル人は南部に集住していますが、人口の大部分はティグレ人およびティグリニャ人が占めています。そのため、アファル人の政治的な影響力は限定的です。一方、ジブチでは、人口の35%をアファル人が占めていますが、残りの60%をソマリ人系のイッサ人が占めており、両民族間の対立が激化しています。

ジブチ内戦とアファル人の苦難

フランス領アファル・イッサ時代には、アファル人の進歩党が政治の主導権を握っていました。しかし、ジブチ独立後は、人口を背景にイッサ人の進歩人民連合が政府を牛耳るようになり、これに不満を持ったアファル人系の統一民主回復戦線（FRUD）によって1991年にジブチ内戦が勃発し、2001年まで継続しました。内戦によって多くの人々が犠牲となり、社会は大きな混乱に陥りました。

現在の状況と課題

現在は和平が成立し、統一民主回復戦線は進歩人民連合寄りの政策をとっていますが、政治の実権は相変わらずイッサ人が握っており、民族間の対立構造は依然として残っています。アファル人は、政治的な権利の確立と、民族間の融和という課題を抱えながら、厳しい環境の中で生き続けています。今後のアファル人の未来は、彼らがこれらの課題をどのように克服していくかにかかっていると言えるでしょう。

もう一度検索