アフター・ヤン

アフター・ヤン



『アフター・ヤン』（原題:After Yang）は、2021年に制作されたアメリカ合衆国のSF映画です。韓国系アメリカ人のコゴナダが監督を務め、俳優コリン・ファレルが主演しました。本作は、作家アレクサンダー・ワインスタインが2016年に発表した短編小説『Saying Goodbye to Yang』を原作としています。

ストーリー



アンドロイド（人型ロボット）やクローンが家族の一員として迎えられることが一般的となった近未来社会を舞台に物語は展開します。ジェイクとキラ夫妻は、中国系の養女ミカを家族に迎えるにあたり、彼女の文化的背景を理解させようと、テクノ・サピエンスと呼ばれる中国系のアンドロイド、ヤンを迎え入れます。穏やかで博識なヤンは、ミカにとって兄のような存在となり、彼女の成長を見守ります。

しかし、ミカが小学生になった頃、ヤンは突如として機能停止に陥ります。若い外見に反し、実は相当に旧式のモデルであったことが判明し、さらに中古で購入したため、付属していた保証書は正規のものではありませんでした。修理を依頼できる場所を探し回るジェイクは難航し、最終的に「技術博物館」に行き着きます。専門家による診断の結果、ヤンは再起動不能であること、そして内蔵された記憶装置が極めて特殊なタイプであり、断片的な映像として記憶が保存されていると指摘されます。博物館はヤンを展示物として引き取りたいという申し出をジェイクに伝えます。

博物館での展示にふさわしい映像を選別する目的で、ジェイクはヤンの記憶を辿ることを決意し、まず最新の記憶から確認を始めます。その中に、若い金髪の女性、エイダの姿を見出します。エイダを捜し出し、ジェイクはヤンが彼女の働く喫茶店に頻繁に通い、やがて二人が交際していた事実を知るのです。

さらに数十年前の記憶へと遡ると、ヤンが最初に、ある女性の子育てを手伝っていた時期に辿り着きます。その女性が子に先立たれ、老いていく姿を見守るヤン。そして、その女性の姪であったエイダにヤンが惹かれていった過去が明らかになります。驚くべきことに、ジェイクがたどり着いた最近の記憶に登場する若いエイダは、過去の記憶に登場したエイダを大叔母と呼ぶ、彼女のクローンであったことが判明します。

この記憶の旅を通して、「人間と機械の間に存在する違いとは何か」という問いに直面したジェイクとキラは、ヤンを単なる展示物として博物館に引き渡すことに葛藤を覚えます。深く苦悩するジェイクの傍らで、娘のミカはヤンから教わった歌を静かに口ずさみます。その歌声は、ヤンの存在が家族の中に確かに根付いていたことを示唆するかのようであり、物語に静かな余韻を残します。

キャスト




製作・音楽



2018年6月、プロデューサーのテレサ・パークは、アレクサンダー・ワインスタインの短編小説『Saying Goodbye to Yang』の映画化権を獲得し、コゴナダが監督と脚色を務めることが決定しました。2019年2月18日には、A24が本作の全米配給権を取得し、コリン・ファレルの主演が報じられました。同年4月には、ジャスティン・H・ミン、ヘイリー・ルー・リチャードソン、サリタ・チョウドリーらの出演が決定しています。

音楽は、坂本龍一とアスカ・マツミヤが共同で担当しました。

公開・評価



本作は、2021年7月8日に第74回カンヌ国際映画祭で初めて上映されました。翌2022年1月21日には、サンダンス映画祭でも上映され、科学や技術をテーマにした優れた作品に贈られるアルフレッド・S・スローン賞を受賞しています。全米では2022年3月4日に一部劇場で公開されました。

批評家からの評価は非常に高く、映画批評集積サイトのRotten Tomatoesでは86%の支持率（平均点7.8/10）、Metacriticでは84/100のスコアを獲得しています。批評家からは、その詩的な表現とテーマの深さが特に評価されています。

関連項目




外部リンク



  • - 公式ウェブサイト（英語）
  • - 公式ウェブサイト（日本語）
  • - アフター・ヤン - 映画.com
  • - After Yang - IMDb（英語）

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