アフリカのヘヴィ・メタル

アフリカのヘヴィメタル音楽

アフリカにおけるヘヴィメタルは、特にケニアやウガンダを中心とした東アフリカ諸国や、南部のナミビア、南アフリカ、ジンバブエなど、さまざまな国で発展した音楽シーンを指します。これらの地域のバンドは、ヨーロッパやアメリカのメタル音楽と伝統的なアフリカの音楽スタイルを融合させ、独自の音楽文化を形成しています。一方、北アフリカのアルジェリアやエジプトなどでは、メタルが持つ政治的側面が色濃く反映されています。

歴史的背景

南アフリカは、アフリカの中で最も著名なメタルシーンを築いてきました。著書『Metal in Africa』で知られるエドワード・バンチズは、サハラ以南と島国のメタルミュージシャンたちの活動を広範囲にわたり記録しています。1980年代中頃から1990年代半ばにかけて、ヨハネスブルクにてヘヴィメタルが導入され、オデッセイやラグナロク、アーバン・アサルトといったバンドが成功を収めました。この流れの中で、政府の規制により楽曲の輸入が禁止され、メタルファンたちは悪魔崇拝といった偏見にさらされる時期もありました。

2000年代に入ると、ダンス・ミュージックが隆盛を誇るなか、メタルシーンは一時衰退しましたが、その後の復活により、南アフリカのバンドは国際的な舞台でも評価されるようになりました。特に、全てのメンバーが黒人のブラックメタルバンド「デモゴラス・サタナム」は、メタルのイメージを変え、多様なファン層を呼び込む役割を果たしています。

ボツワナでは、1970年代のクラシック・ロックの影響を受けつつメタルシーンが芽生え、ウルストやオーバースラストなどのバンドが国際的な知名度を得るに至りました。2014年には、ボツワナのヘヴィメタルシーンを描いたドキュメンタリー映画「March of the Gods」が公開され、この地域の文化的発展を広く知らしめました。また、モザンビーク、ナミビア、ジンバブエでもそれぞれのメタルシーンが形成されており、ナミビアでは定期的にメタルフェスティバルが開催されています。

北アフリカに目を向けると、ここでも1980年代からメタルが広まり、特に政治的背景が影響しています。例えば、1997年にはエジプトでの大規模な逮捕事件があり、多くのメタルファンが弾圧されました。それでも、2000年代以降、メタルシーンは徐々に復興を遂げ、2011年のエジプト革命を経て、政治的なメッセージを持つ作品が増えるようになりました。しかし、依然として社会的な偏見は根強く、メタルバンドの活動は厳しい環境にさらされています。

モロッコでは、2003年にメタルバンドのメンバーとファンが逮捕される事件が発生しましたが、その後の抗議運動により多くの人が解放されました。近年、L'Boulevardと呼ばれる音楽フェスティバルが成功を収めており、政府のサポートを受けながらメタルシーンも発展しています。チュニジアやアルジェリア、リビアでは、シーンの規模は小さいものの、それぞれの国で独自のメタル文化が存在しています。

さらに、東アフリカのケニアやウガンダでは1990年代からメタルが紹介され、特にケニアでは信仰や社会問題をテーマにした楽曲が増えています。中央アフリカや西アフリカではメタルシーンの存在感が薄いものの、今後の発展が期待されます。

アフリカを通じて、メタルは「音楽」を超え、社会的な表現や地域の文化を反映する力を持っているのです。そして、インターネットの普及により若手ミュージシャンたちはさまざまなスタイルを取り入れ、さらなる進化を続けています。

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