アフリカ・バンバータ

アフリカ・バンバータ：ヒップホップの祖、その功績と影響

アフリカ・バンバータ（本名：ランス・テイラー）は、1957年4月17日、ニューヨーク州ブロンクス区出身のミュージシャン、DJです。ヒップホップ黎明期から活動し、クール・ハーク、グランドマスター・フラッシュと並び、ヒップホップの三大オリジネイターの一人として知られています。

キャリア初期とズールー・ネイションの設立

1970年代初頭、バンバータはサウス・ブロンクスでブロックパーティーを開催し、DJとしてのキャリアをスタートさせました。1973年には、アフロアメリカンの若者たちによる組織「ズールー・ネイション」を設立。ラップ、DJ、ダンス（ブレイクダンス）、グラフィティといった黒人文化を統合し、ヒップホップという新たな文化を創り上げました。

ライターのスティーヴン・ハガーは、バンバータがヒップホップという言葉を初めて使用した記事が、ヴィレッジ・ボイス紙に掲載されたと述べています。1982年には、クラフトワークに影響を受け、アフリカ・バンバータ&ソウル・ソニック・フォース名義で『プラネット・ロック』を発表。この曲は、ヒップホップ、エレクトロ・ファンクシーンに大きな影響を与えました。

音楽性と影響

バンバータのプレイリストは、ジェームス・ブラウン、ジミー・キャスター・バンチ、インクレディブル・ボンゴ・バンドなどのファンク・ナンバーに加え、クラフトワークなどの電子音楽も含まれていました。彼はブレイクビーツのジャンルにこだわらず、様々な音楽を融合させることで、独自のスタイルを確立しました。

1980年代を通じて、バンバータは初期ヒップホップ音楽と文化を広める中心的な役割を果たしました。「ヒップホップ文化の祖父」「ヒップホップ文化のアメン＝ラー（神）」「エレクトロファンクの父」など、様々な異名を持ちます。また、ギャングのブラック・スペード団を音楽文化集団ユニバーサル・ズールー・ネイションに吸収させ、ヒップホップ文化を世界に広めた功績も評価されています。

生い立ちと社会活動

ランス・テイラーとしてブロンクスで生まれたバンバータは、幼少期から黒人解放運動の活動家であった母親の影響を受けました。また、母親が所有する様々なジャンルのレコードに触れることで、音楽的な素養を培いました。1970年代のサウス・ブロンクスは、ギャングが勢力を拡大しており、バンバータ自身もギャング「サベッジ・セブン団」（後のブラック・スペード団）の創設者となり、リーダーとして活動しました。

しかし、アフリカへの旅行をきっかけに、暴力的な活動を止めることを決意。ズールー族の首長バンバータにちなんで、アフリカ・バンバータ・アーシムと改名し、ギャングの縄張りを平和親善のために役立てることを考え始めました。そして、ギャングを「ブロンクス・リバー団体」として再編し、音楽を通じて若者たちを更生させる活動を開始しました。

その後のキャリアと晩年

1982年には、バンバータと彼を支援するダンサー、アーティスト、DJが、アメリカ国外では初めてとなるヒップホップツアーを敢行。ユニバーサル・ズールー・ネイションの拡大と、ヒップホップ文化に対する理解を促進しました。また、1985年には、アパルトヘイトに反対するアーティストたちによる楽曲『サン・シティ』のレコーディングに参加するなど、社会的な活動も積極的に行いました。

1990年代以降も、バンバータは音楽活動を続け、WestBamとのコラボレーションや、Rage Against the Machineによるカバーなどを通じて、その影響力を示しました。しかし、2016年には、過去の性的虐待疑惑が浮上し、ズールー・ネイションのリーダーを辞任。晩年は、その功績に影を落とすこととなりました。

ディスコグラフィーと日本公演

アフリカ・バンバータは、数多くのアルバムとシングルをリリースしています。代表的なアルバムとしては、『Planet Rock: The Album』、『Death Mix』などがあります。また、日本にも数回来日し、公演を行っています。

1985年
1999年
2009年

まとめ

アフリカ・バンバータは、ヒップホップの創始者の一人として、音楽史に名を刻む人物です。彼の音楽と活動は、世界中の若者に影響を与え、ヒップホップ文化をグローバルな現象へと押し上げました。晩年のスキャンダルは残念ですが、彼の音楽的な功績は色褪せることはありません。

関連事項
ファンク
オールド・スクール
ジェームス・ブラウン
* R&B

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