アブコ・レコード

アブコ・レコード（ABKCO Records）は、アメリカ合衆国を代表する歴史あるレコードレーベルです。その起源は、カメオ＝パークウェイ・レコードというレーベルに遡ります。1967年、実業家のアレン・クレインがカメオ＝パークウェイ・レコードを買収し、社名をアブコ・レコードへと変更しました。

アブコ・レコードは、音楽史に名を刻む数々のアーティストの作品を世に送り出してきました。代表的なアーティストには、ソウルミュージックの巨匠サム・クック、ロックンロールのパイオニア、チャビー・チェッカー、R&Bシンガーのボビー・ライデル、そして、「ウォール・オブ・サウンド」で知られるプロデューサー、フィル・スペクターなどが名を連ねます。さらに、イギリスを代表するロックバンド、ローリング・ストーンズや、ビートルズと同時代に人気を博したハーマンズ・ハーミッツなども所属アーティストとして輝かしい功績を残しました。

レーベル名である「ABKCO」は、「Allen B. Klein Company」の頭文字を取った略称です。アレン・クレインは、しばしば冗談めかして「A Better Kind of COmpany（より良い種類の会社）」という意味だと説明していました。この言葉には、アブコ・レコードが単なるレコード会社ではなく、より質の高い音楽制作を目指しているという、クレインの強い意志が込められていると言えるでしょう。

アレン・クレインとアーティスト、特にビートルズとの関係は複雑で、興味深いエピソードがあります。ビートルズがアレン・クレインと結んだ契約は、後に大きな経済的損失をもたらしたとされています。ビートルズのメンバー、ジョージ・ハリスンは、ソロ活動開始後、自身のアルバム『オール・シングス・マスト・パス』に収録された「ビウェア・オブ・ダークネス」を、ある時フィル・スペクターの前で演奏しました。その際、歌詞の「Beware of Darkness（暗闇に気をつけろ）」を冗談めかして「Beware of ABKCO（アブコに気をつけろ）」と変えて歌ったのです。これは、アレン・クレインとの契約による経済的損失への皮肉として、音楽業界関係者の間で語り継がれる有名な逸話となりました。

アレン・クレインは2009年に他界しましたが、彼の功績は現在もアブコ・レコードを通じて受け継がれています。現在、社長を務めるのは彼の息子、ジョディ・クレインです。アレン・クレインが築き上げた伝統を守りながら、アブコ・レコードはこれからも時代を超える音楽を世に送り出し続けることでしょう。その歴史とアーティストの輝かしい功績は、音楽ファンの心に深く刻まれています。アブコ・レコードの今後の展開にも注目が集まります。

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