アブドゥラ・ヤミーン

アブドゥラ・ヤミーンの生涯と政治

アブドゥラ・ヤミーン・アブドル・ガユームは、1959年5月21日に生まれ、モルディブの政治家として活躍しました。彼は、モルディブの第二共和政において第5代大統領を務めました。また、30年間もの長期政権を築いたマウムーン・アブドル・ガユーム元大統領の異母弟でもあります。

初期の経歴と大臣としての活動

ヤミーンは、マレで中等教育を終えた後、レバノンの大学で経営学の学士号を取得しました。その後、アメリカ合衆国の大学で公共政策学の修士号を取得し、帰国後は兄が設立した企業の共同経営者となりました。1993年には貿易・工業大臣に就任し、その後も教育・社会保障大臣、観光・民間航空大臣など、様々な役職を歴任しました。

モルディブ貿易公社会長としての活動と疑惑

1990年から2005年にかけて、ヤミーンはモルディブ貿易公社の会長を務めました。しかし、在任中に不正行為を行い、数百万ドルを蓄財したとの疑惑が報じられています。また、同時期にアイランド航空サービス会長、アドゥー開発公社副会長も歴任し、1993年から2013年まで国民議会議員を務めました。2004年にはマレの区長にも就任し、教育・社会福祉政策や文化振興、高等学校の支援に尽力しました。

大統領選挙と政権運営

2013年の大統領選挙では、元大統領のモハメド・ナシードとの激戦を制し、大統領に就任しました。しかし、就任後は反体制派を弾圧し、多くの政治家を収監しました。2018年には最高裁判所が収監されていた政治家の釈放を命じましたが、ヤミーン大統領はこれを拒否し、非常事態宣言を発令しました。また、兄であるマウムーン・アブドル・ガユーム元大統領も逮捕しました。

中国との関係強化

ヤミーン大統領は、歴代政権の親インド政策から転換し、中国との関係を強化しました。2015年には二国間で自由貿易協定を締結し、中国からの資金援助で人工島の造成や、首都マレと空港を結ぶ橋（シナマーレ橋）を建設しました。これらのインフラ整備は、首都の生活環境改善に貢献しましたが、一方で中国への返済負担も増大し、野党からの批判を浴びました。

大統領選挙での敗北と逮捕

2018年の大統領選挙で、ヤミーンは野党連合のイブラヒム・モハメド・ソリに敗れ、再選を果たすことはできませんでした。2019年にはマネーロンダリング容疑で起訴され、証人への偽証依頼の疑いで逮捕されました。同年11月には禁錮5年の判決を受けましたが、後に最高裁判所によって釈放されました。しかし、2022年には汚職とマネーロンダリングの罪で再び逮捕され、懲役11年と罰金の判決を受けました。2024年4月には最高裁判所が2022年の裁判手続きに不備があったとして判決を破棄し、裁判のやり直しを命じました。

日本との関係

ヤミーンは、貿易・工業大臣として2004年に初めて日本を訪れました。2014年にはモルディブ大統領として公式訪問し、当時の安倍晋三首相と首脳会談を行いました。両首脳は、津波被害を受けたそれぞれの国への支援が両国間の絆を強めたことを確認し、気候変動対策や防災などで日本がモルディブに協力することを確認しました。また、日本記者クラブで会見し、日本のメディアからの質問に答えました。

まとめ

アブドゥラ・ヤミーンは、モルディブの政治史において重要な役割を果たした人物です。大臣、大統領としての活動、中国との関係強化、そして汚職や逮捕など、波乱に満ちた人生を送りました。彼の政治キャリアは、モルディブの政治と社会に大きな影響を与えました。

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