アブドゥル・ムイス

アブドゥル・ムイス：インドネシア独立に捧げた生涯

アブドゥル・ムイス（1886年7月3日 - 1959年6月17日）は、インドネシアの作家、ジャーナリストであり、オランダからの独立を掲げた民族主義運動の重要な人物です。

生涯と政治活動

1886年、ムイスは西スマトラ州スンガイで、ミナンカバウ人の有力者の家庭に生まれました。オランダ式の教育を受けた後、ジャカルタで医学を3年間学びました。卒業後、官吏となりますが、ジャーナリズムの世界へ転身し、1912年には民族主義新聞「Kaoem Moeda」を共同で創刊します。ムイスは新聞を通じて、インドネシアの人々に対するオランダの抑圧的な姿勢を批判し、植民地支配に対する否定的な立場を明確にしました。第一次世界大戦中には、インドネシアの自治権拡大のために積極的に活動し、東インド防衛委員会のメンバーとして貢献しました。

ムイスはまた、サレカット・イスラムのメンバーとしても活動し、ウマル・サイード・チョクロアミノトらと共にオランダ領東インド植民地議会の議員に選出されました。彼らは現地人の地位向上と自治権拡大を目指しましたが、1919年に北スラウェシ州で遊説中に、現地のオランダ人官吏殺害の容疑で逮捕されてしまいます。釈放後の1922年には、ジョグジャカルタ市で発生した暴動に参加し再び逮捕され、西ジャワ州ガルトに3年間投獄されました。

文学活動

1920年代後半からは、政治活動から創作活動へと重点を移し、1927年に出版社バライ・プスタカに所属しました。1928年には、人種差別と社会差別をテーマにした処女作『Salah Asuhan』を発表し、高い評価を得ました。この作品では、男性ハナフィと女性コリーの悲恋を通して、「伝統的価値観を守るか、西洋的価値観を受け入れるか」という、植民地下のインドネシアの人々が直面した葛藤を描き出しています。

『Salah Asuhan』は、ムイスの代表作であると同時に、最も重要な近代インドネシア文学作品の一つとして知られています。2009年にはインドネシア文化遺産シリーズの一作としてバライ・プスタカから復刻され、2010年にはロンター財団から英訳版が出版されました。その後もムイスは、『Pertemuan Jodoh』など4作の小説を執筆しました。

ムイスは生涯の後半をバンドンで過ごし、バンドン工科大学の設立にも尽力しました。第二次世界大戦後は、西ジャワ州とスンダ族の近代化に力を注ぎました。

1959年6月17日、ムイスはバンドンで亡くなりました。彼はインドネシア独立の闘士として高く評価されており、多くの都市にムイスの名を冠した道路が存在します。彼の死後、インドネシア民族主義への貢献が認められ、スカルノによってインドネシア国家英雄の称号が授与されました。

著作

Salah Asuhan (1928)
Pertemuan Jodoh (1932)
Surapati (1950)
Hendak Berbakti (1951)
* Robert Anak Surapati (1953)

アブドゥル・ムイスの生涯は、インドネシアの独立と近代化に捧げられました。彼の作品は、インドネシアの歴史と文化を理解する上で貴重な資料となっています。

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