アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー

アブド・ラッボ・マンスール・ハーディーの経歴と政治的背景

アブド・ラッボ・マンスール・ハーディー（Abd Rabbuh Mansur Hadi）は、1945年9月1日にイエメンのアビヤン県で生まれました。彼は軍人としてのキャリアをスタートさせ、1970年に南イエメン軍に入隊しました。その後、ソビエト連邦で4年間、軍事指揮の訓練を受けます。1980年代には、イエメン社会党のリーダーであった南イエメンのアリ・ナセル・ムハンマド大統領の側近として活動し、彼と共に北イエメンへ逃れることになりました。1990年代初頭には、ハーディーは少将に昇進します。

政治家としての飛躍

1994年5月、ハーディーは国防大臣に就任し、その後のイエメン内戦で重要な役割を果たすことになります。サーレハ前大統領が治療のためサウジアラビアに渡った際、ハーディーは2011年6月から9月まで大統領代行として職務を遂行しました。そして、サーレハ大統領が譲位することを決定し、2012年2月21日の選挙で99.8%の得票を得て正式に大統領に就任しました。

しかし、彼の政権はすぐに困難な局面を迎えました。サーレハ前大統領との対立関係が深まり、特にザイド派のフーシと結びついてしまいました。フーシが首都サヌアを制圧したことで、ハーディーは政権を失い、彼自身は軟禁状態となります。

内戦と大統領辞職の経緯

2015年1月、フーシが政権を掌握し、ハーディーは辞職を表明しましたが、その辞意は議会の承認を得られず宙に浮く形になりました。彼は再度国際社会に対してフーシの行動を非難し、アデンに逃れたのち、サウジアラビアの支援を受けます。3月26日から、サウジアラビア主導の軍事介入が始まり、多くの国々が連携してイエメンに空爆を行いました。

2015年7月14日にはハーディー派がアデン国際空港を奪還しましたが、依然としてサヌアはフーシに統治されていました。以降もハーディーはフーシとの戦いを続け、停戦合意も達成されることなく、戦況は膠着状態に陥ります。

2022年の権限委譲

2022年4月、ハーディーは権限を新設された大統領指導評議会に移譲し、自らは現職を退任しました。サウジアラビアはこの決定を支持し、フーシに対する和平交渉を開始するよう呼び掛けました。しかし、それに対してハーディーはリヤドでの自宅軟禁状態に置かれ、外部との連絡も困難となりました。

これらの経緯を振り返ると、ハーディーの政治生活はイエメンの複雑な歴史や内戦の影響を色濃く反映していることが分かります。彼の政権は、内部の権力闘争や外的な軍事介入による影響を受け、特にフーシとの対立がその後のイエメンの状況に大きな影響を与えることとなりました。

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