アブラハム・メンデルスゾーン

アブラハム・エルンスト・メンデルスゾーン・バルトルディの生涯

アブラハム・エルンスト・メンデルスゾーン・バルトルディ（1776年12月10日 - 1835年11月19日）は、ドイツ系ユダヤ人の銀行家であり、慈善活動家として知られています。彼は、著名な音楽家であるフェリックス・メンデルスゾーンとファニー・メンデルスゾーンの父でもあります。

青年期

アブラハムはベルリンで、哲学者モーゼス・メンデルスゾーンの息子として生まれました。父モーゼスの死後、メンデルスゾーン家は裕福な家庭となっていました。モーゼスは、ユダヤ人がユダヤ文化だけでなくドイツ文化にも参加すべきだと考えており、アブラハムは自由主義的な教育を受けました。1792年にはユダヤ自由主義組織「Gesellschaft der Freunde」の創立メンバーとなり、1793年には合唱団ベルリン・ジングアカデミーの設立にも関与しました。1796年、アブラハムは後に妻となるレア・ザロモンと出会います。レアはダニエル・イッツィッヒの孫娘で、ジングアカデミーに入団していました。

1797年、アブラハムは兄ヨーゼフの指示でパリに行き、銀行経営を学びました。ヨーゼフはダニエル・イッツィッヒの孫であるモーゼス・フリートランダーと共にメンデルスゾーン・フリートランダー金融会社を設立していました。しかし、フランスでの生活はアブラハムにとって魅力的なものではありませんでした。1804年、アブラハムはレアとハンブルクで結婚し、そこで家族の銀行の事務所を運営しました。この頃、彼はレアの知人であるゲオルク・ペルヒャウと出会っています。ペルヒャウはC.P.E.バッハの遺言執行人であり、多くの草稿を音楽家のザラ・レヴィに譲り、レヴィがそれらをジングアカデミーに寄贈しました。

1804年、アブラハムは兄ヨーゼフの銀行会社の協力者となり、その関係は1822年まで続きました。後にMendelssohn & Co.として知られるようになるこの私的な銀行は、1815年から1938年までベルリンで営業しましたが、ナチスの圧力によって閉鎖されました。

ベルリンでの生活

1811年、フランスがハンブルクを占領し貿易を制限したため、アブラハムと家族はベルリンに戻りました。子供たちのフェリックスとファニーが音楽の才能を見せ始めると、アブラハムは彼らにその才能を伸ばすための教育を受けさせました。しかし、アブラハムは音楽がフェリックスのキャリアには役立つかもしれないが、ファニーにとっては時間の無駄だと考えていました。アブラハムはフェリックスの指導をジングアカデミーの責任者であるカール・フリードリヒ・ツェルターに任せました。その後、ピアニストのイグナーツ・モシェレスを雇い、子供たちにレッスンを受けさせました。これがきっかけでメンデルスゾーン家とモシェレスの交際が始まりました。アブラハムは、1829年にフェリックスが初めてイングランドに行った際、息子にモシェレスへの挨拶を頼み、自身もロンドン滞在時にはモシェレスの家に滞在しています。ベルリンのメンデルスゾーン家の邸宅ではしばしば演奏会が開かれ、それがフェリックスの初期作品を披露する場となりました。

アブラハムとレアには、他にもレベッカ（数学者ペーター・グスタフ・ディリクレと結婚）とパウル（銀行家）の2人の子供がいました。1825年、アブラハムはベルリンの市議に選出されました。

アブラハムはベルリンで亡くなり、妻のレアと共に、ベルリンの聖三位一体教会の第一墓地に埋葬されています。

ユダヤ教に対する態度

アブラハムは、自身のユダヤの出自に対して複雑な感情を抱いていました。彼はユダヤ教の時代は終わり、ドイツ社会に統合されるべきだと考えていました。そのために、彼はレアとともに、1809年と1812年に生まれたフェリックスとパウルに割礼を受けさせないという決断をしました。これは、レアの母親との間で議論を引き起こしました。アブラハムはまた、レアの弟ヤコプ・ザロモン・バルトルディの助言を受け入れ、姓をメンデルスゾーンからバルトルディに変更しました。しかし、アブラハムはフェリックスに「メンデルスゾーンを名乗るのを止め、バルトルディ姓のみを用いるように」と手紙を送ったにもかかわらず、フェリックスは両方の姓を使い続け、一般的には「メンデルスゾーン」として知られるようになりました。アブラハムは子供たちを宗教教育を受けさせずに育て、1816年に洗礼を受けさせました。彼自身とレアも1822年にフランクフルトで洗礼を受けました。

アブラハムは、時代の変化を捉え、自身の家族が新たな社会に受け入れられることを強く願っていました。彼の行動は、当時ドイツ社会に生きたユダヤ人の苦悩と、新たな時代への希望を象徴していると言えるでしょう。

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