アブランテス公爵夫人の肖像

アブランテス公爵夫人の肖像

『アブランテス公爵夫人の肖像』は、1816年にスペインの著名な画家フランシスコ・デ・ゴヤによって制作された肖像画です。この作品は、アブランテス公爵夫人マリア・マヌエラ・イシードラ・テレス・ヒロン・イ・アロンソ・ピメンテルを描いており、現在はマドリードのプラド美術館に展示されています。この肖像画は、ゴヤの最後の貴族女性の肖像画として特に評価されており、その作品には彼の独特なスタイルと当時の社会的背景が色濃く反映されています。

人物背景

アブランテス公爵夫人、マリア・マヌエラは1794年に生まれました。彼女の両親である第9代オスーナ公爵ペドロ・テレス＝ヒロンとその妻マリア・ホセファ・ピメンテルは、ゴヤの最初の後援者였습니다。実際、ゴヤは1785年にオスーナ公爵夫妻の肖像画を依頼されたことがあり、家庭に深く関わっていました。彼女は1813年にアブランテス公爵と結婚し、6人の子供に恵まれました。彼女は1838年にマドリードで亡くなりました。

作品の特長

『アブランテス公爵夫人の肖像』は、マリア・マヌエラの結婚から間もなく、オスーナ公爵夫人から娘への贈り物として依頼されました。この作品では、豊かな色彩と力強い筆致により、ゴヤの卓越した技術が見事に表現されています。暗い背景に映える公爵夫人は、美しい白いバラの花冠をつけ、右手に楽譜を持っています。彼女の優雅でありながら少し緊張した表情は、まさに歌声を披露しようとしている瞬間を捉えているようです。

彼女が着ている青色のドレスはナポレオン時代のエンパイアスタイルを反映しており、高ウエストのデザインは彼女の女性らしさを強調しています。さらに、パールの装飾が首周りや手首、さらには肩やドレスの結び目を華やかに彩っています。また、黄色のショールがドレスの上にかかり、その柔らかな動きが全体の雰囲気に調和をもたらしています。

作品全体は、ロココの優雅さとロマン主義の精神が交錯し、公爵夫人の高貴さや優雅さ、そして純真さを伝えています。ゴヤの繊細な筆致が公爵夫人の控えめながらも魅力的な雰囲気を巧みに表現しており、彼女の社会的地位や人生の特別な瞬間が垣間見えます。花冠と楽譜は、彼女の歌唱への情熱や才能を暗示しており、彼女の若々しさと美しさを強調しているのです。

作品の来歴

1816年4月30日の文書によれば、公爵夫人はこの肖像画の報酬として4000レアルを支払ったとされています。肖像画はその後、アブランテス公爵夫妻によって管理され、キンタ・デ・ラ・エンハラーダ伯爵やエル・バリェ・デ・オリサバ伯爵の手に渡りました。最終的には1996年にビリャエスクーサ遺贈基金を通じてプラド美術館に購入され、今日でも多くの人々に愛されています。

ギャラリー

• - ゴヤによる第9代オスーナ公爵の家族の肖像なども同時に展示されており、当時の家族の様子や社会的背景について知ることができます。

このように、『アブランテス公爵夫人の肖像』は、フランシスコ・デ・ゴヤの芸術的な副産物であり、彼の創作スタイルと当時の美的感覚を一つの作品に凝縮した、貴重な芸術作品となっています。

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