ロマン主義

ロマン主義について

ロマン主義（英: Romanticism、仏: Romantisme、独: Romantik、伊: Romanticismo、西: Romanticismo、葡: Romantismo）は、主に18世紀末から19世紀前半にかけてヨーロッパで起こった文化的運動です。この時期、理性や合理主義に偏りがちな古典主義に対抗し、感受性や個人の主観的体験が重要視されるようになりました。恋愛の賛美や民族意識の高揚、中世への憧憬など、さまざまなテーマに触れられ、近代国民国家の形成に寄与しました。

ロマン主義の背景と発展

ロマン主義は教条主義への反動として、アメリカの哲学者アーサー・オンケン・ラヴジョイが指摘したように、1780年から1830年の間に特に盛んでした。産業革命に伴う社会の変化や、個人の自由と独自性を追求する動きがロマン主義の根底にはあります。フランスを中心とした運動は、初期ロマン派の作家たちによって形作られ、ナポレオン1世の治世では文化的抵抗の象徴として文芸サロンやサークル内でその表現が育まれました。特に、ジャン＝ジャック・ルソーの思想は、ドイツのロマン主義に大きな影響を与え、それがまたフランスに逆輸入される形で発展しました。

表現の特色

ロマン主義の根底には、古典主義が軽視してきた個人の独自性や実存的不安の重視があります。この時代の作品ではエキゾチシズムや神秘主義、夢のような題材が好まれ、その結果、個人の感情や苦悩、動揺が大きく取り上げられました。ロマン主義者たちは、しばしば古典的な技法と芸術的自由の制約を批判し、感情の表現を優先しました。

地域別のロマン主義

フランス

フランスのロマン主義運動は、ベルナルダン・ド・サン＝ピエールやディドロ、ルソーの作品にその萌芽を見出せます。19世紀に入ると、スタール夫人やシャトーブリアンといった初期ロマン派作家が登場し、個人の欲求や苦痛の表現が一層明白になりました。また、ヴィクトル・ユゴーは、自由主義や個人主義を強く打ち出し、ロマン主義の確立に寄与しました。

イギリス

イギリスでは、ウィリアム・ブレイクを起点として、ウィリアム・ワーズワースとサミュエル・テイラー・コールリッジの共著の詩集『抒情民謡集』が重要な役割を果たしました。彼らの表現はフランス革命の影響を受けつつ、社会秩序への挑戦としても機能しました。

ドイツ

ドイツのロマン主義は、主にイエナを中心として発展し、シュレーゲル兄弟やティークが主要な役割を果たしました。彼らは哲学的な志向を持ち、個人の自由や未知なるものへの探求を追求しました。

日本

日本においては、明治中期からロマン主義が浸透し、森鷗外の『舞姫』がその始まりとされています。島崎藤村や北村透谷の活動により、日本独自のロマン主義文学が展開されました。

結論

ロマン主義は、時代と地域によって様々な表現や影響を受けながら、個人の自由や独自性の重要性を訴え続けました。その影響は今日の文化や芸術にも色濃く残っています。この運動は、文学や美術、音楽といった多彩な領域で新たな価値観を築き上げ、近代的な感性の基盤を形成しました。

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