アプリケーションサービスプロバイダ

アプリケーションサービスプロバイダ（ASP）とは？

アプリケーションサービスプロバイダ（ASP）は、インターネットなどのネットワークを通じて、アプリケーション[[ソフトウェア]]の機能をサービスとして提供する事業者のことです。顧客は、自社でソフトウェアを保有・管理することなく、ブラウザなどのクライアントソフトウェアを使って、ASPが提供するサーバー上のアプリケーションを利用できます。

このASPという概念は比較的新しいものですが、遠隔地からコンピュータ資源を利用するという基本的な考え方は、1960年代のメインフレーム時代から存在していました。当時は、計算センターなどが大型コンピュータの処理能力を時間単位で提供するサービスが一般的でした。その後、パソコンやワークステーションの普及により、企業は自社でシステムを構築するようになりましたが、1990年代半ばから、インターネット技術の発展を背景に、ASPのようなサービス形態が再び注目を集めるようになりました。

ASPの進化と歴史

ASPは、当初は特定の企業のアプリケーションをホスティングするサービスから始まりました。インターネット接続環境の整備と高速化、そして業務システムの標準化が進むにつれて、ASPは様々なアプリケーションに対応できるようになり、現在では、財務会計、給与計算、顧客関係管理（CRM）、グループウェアなど、幅広い分野で利用されています。

1998年頃から米国で「ASP」という用語が使われ始め、1999年には業界団体であるASP Industry Consortiumが設立されるなど、ASPは急速に普及しました。日本では、2000年代に入ってから本格的な普及が始まりました。

ASPと類似の概念

ASPは、ユーティリティコンピューティング、Software as a Service（SaaS）、クラウドコンピューティングなど、複数の概念と関連があります。これらの概念は、いずれも利用量に応じた課金方式や、インターネット経由でのサービス提供を特徴としていますが、ASPは、特にアプリケーション[[ソフトウェア]]の機能をサービスとして提供することに重点を置いています。

ユーティリティコンピューティング: サービスの使用量に応じて料金を支払う方式
Software as a Service (SaaS): ソフトウェアをサービスとして提供するモデル
クラウドコンピューティング: インターネットを介してサービスを提供する広範な概念
マルチテナント: 複数の顧客が同一のシステム環境を共有する方式

ASPの利用分野

ASPは、多様な分野で利用されています。以下はその例です。

オープンソース開発コミュニティの基盤
分散ソフトウェア開発のエンジニアリング環境
財務会計
給与計算
グループウェア
営業管理、顧客管理、ICT資産管理
販売管理、在庫管理
ウイルス対策ソフト
ネット風評監視サービス

事実上、あらゆるアプリケーションでASPモデルを採用できる可能性があります。ただし、メリットとデメリットを比較検討し、適切な利用方法を選択することが重要です。

ASPのメリット

ASPを利用するメリットは主に以下の通りです。

コスト削減: ハードウェアやソフトウェアの購入、保守管理の手間を削減できます。インターネット接続環境とブラウザがあれば利用できます。ソフトウェアのバージョンアップやバグ修正などもASP事業者が行います。
初期費用削減: 特に小規模な企業にとって、ソフトウェアの購入費用よりも安価な場合があります。
サービス提供者のメリット: ソフトウェアのバージョンアップ、利用者認証、利用状況の監視、不具合対応などが容易になります。

ASPのデメリット

ASPのデメリットは主に以下の通りです。

セキュリティリスク: 個人情報や機密情報の漏洩リスクがあります。通信は暗号化されていますが、セキュリティ事故のリスクは完全に排除できません。
ネットワーク依存性: アプリケーションの反応速度はネットワーク速度に依存します。ネットワーク環境が不安定な場合、アプリケーションの使い勝手が悪くなります。

システム内部でのASP

最近のWebシステムでは、Webアプリケーションサーバー上にアプリケーションを実装することが一般的です。しかし、データウェアハウスやCRMなど、データ処理が負荷の高いシステムでは、ETLツールによるデータ処理や帳票作成などの処理に大きな計算資源とメモリ資源を消費するため、Webアプリケーションサーバーでの処理には適しません。このような場合、別途アプリケーション処理専用のサーバーを構築し、ASPとしてサービスを提供することがあります。これをASPサーバーと呼びます。

まとめ

ASPは、ネットワーク経由でアプリケーションサービスを提供する便利なモデルですが、セキュリティやネットワーク環境への依存性といった課題も存在します。導入を検討する際は、メリットとデメリットを十分に検討し、自社のニーズに合ったシステムを選択することが重要です。

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