アプリリア (会社)

アプリリア：イタリアンスピリットが凝縮されたモーターサイクルの歴史

アプリリア（Aprilia S.p.A.）は、イタリアを代表するオートバイメーカーです。第二次世界大戦後の1945年、アルベルト・ベッジオ氏によって創業されました。当初は自転車の製造からスタートし、その後、オートバイ市場へ進出。鮮やかな青と金色の50ccバイクで大きな成功を収めました。

黎明期：スクランブラーとモトクロスの挑戦

創業者の息子であるイバノ・ベッジオ氏が経営を引き継いだ1968年以降、アプリリアは小型バイクとスクーターに注力。中でも、1970年に発売されたスクランブラータイプの「スカラベオ」は、モトクロスシーンでも使用され、ブランドの象徴的なモデルとなりました。1974年には本格的なモトクロッサーの製造を開始、世界選手権にも参戦。ミラノ出身のイヴァン・アルボルゲッティや日本人ライダーの鈴木都良夫選手らが活躍しました。レプリカモデルの発売も成功を収め、アプリリアの名声を高めました。

しかし1980年代に入ると、オフロードバイク市場の縮小という逆風に見舞われます。そこでアプリリアは、既存の車種やブランドイメージにとらわれず、エンデューロ、トライアル、オンロードモデルへと積極的にラインナップを広げ、事業を多角化していきました。モトクロス世界選手権へのファクトリー参戦は1985年を最後に終幕を迎えますが、ロードレースの世界選手権（WGP）への挑戦が始まります。

ロードレースへの挑戦と黄金時代

1980年代後半からアプリリアはロードレース世界選手権（現MotoGP）へ本格参戦。日本メーカーが強豪として君臨する中、小規模なイタリアメーカーとしてGP250クラスで存在感を示し、1987年には初優勝を飾ります。1990年代に入ると、新型RS250Vの投入を機に、アレッサンドロ・グラミーニ、マックス・ビアッジ、バレンティーノ・ロッシ、坂田和人といった名だたるライダーを擁し、125cc/250ccクラスで数々のタイトルを獲得。特に1994年から2003年までの10年間においては、250ccクラスで7度のライダーズタイトルを獲得するなど、黄金時代を築き上げました。

この成功を背景に、アプリリアは都市型コミューター（スクーター）の生産にも進出。かつて人気を博したスカラベオはスクーターとして復活し、現在も高い人気を誇ります。2000年にはスーパーバイク世界選手権（WSBK）にも参戦、初年度に5勝を挙げましたが、MotoGPに集中するため2002年に撤退しました。

ピアッジオ傘下と新たな展開

2000年代に入ると、モト・グッツィやラベルダといったブランドの買収なども行いましたが、欧州二輪市場の危機や買収による財政負担により、2004年にピアッジオ傘下に入ります。その後、MotoGPからの撤退、スーパーバイク世界選手権への復帰と撤退、そして再びMotoGPへの復帰など、激動の時代を経験。オフロード分野にも再参入し、4ストロークエンジン車での世界タイトルも獲得しています。2006年と2007年にはホルヘ・ロレンソ選手が250ccクラスを連覇するなど、ロードレース世界選手権でも好成績を残しました。2011年にはニコラス・テロル選手が125ccクラスで優勝を果たしましたが、これは2022年現在、アプリリア最後のロードレース世界選手権タイトルとなっています。

近年は、ラリーレイドにも参戦し、実績を残しています。2024年には、ダカールラリーなどを除くトップラリーレイドへの復帰を予定しています。

製品ラインナップと日本市場

アプリリアは、レーサーレプリカ、スーパースポーツ、スポーツバイク、ツアラー、ネイキッド、デュアルパーパス、オフロード、モタード、スクーターなど、幅広い製品ラインナップを展開しています。RSシリーズやRSVシリーズは、その高い性能とスタイリッシュなデザインで人気を博しています。日本市場においても、ピアッジオグループジャパン株式会社が正規輸入販売を担当し、ドゥカティやビモータと並ぶ知名度を誇っています。原田哲也氏や坂田和人氏などの日本人ライダーの活躍も、ブランドイメージの向上に貢献しました。

アプリリアの歴史は、革新と挑戦の歴史です。常に時代の変化に対応し、新しい技術とデザインを追求することで、世界中のライダーを魅了し続けています。

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