アベル・タスマン

アベル・ヤンスゾーン・タスマンの生涯と探検

アベル・ヤンスゾーン・タスマン（1603年 - 1659年）は、オランダの著名な探検家であり、特にオランダ東インド会社（VOC）に所属して行った1642年と1644年の航海で知られています。彼は1643年にタスマニア島とニュージーランド、フィジーに到達した最初のヨーロッパ人となりました。彼の足跡は、今なお大きな影響を与えています。

略歴

タスマンはフローニンゲン州の小村、Lutjegastで生まれました。1633年、オランダ東インド会社の職員としてバタヴィア（現在のジャカルタ）への赴任が決まりました。彼は4年間の任期を終えた後、一度アムステルダムに戻りましたが、その後再び妻を伴い10年の契約でバタヴィアに戻りました。1639年には、北太平洋の探検に副官として参加し、当時噂されていた金と銀に満ちたという日本近海の島々の探査を手伝いました。この航海では小笠原諸島の父島と母島を目撃したヨーロッパ人としても知られる存在です。

1642-43年の航海

彼の最初の重要な航海は1642年のもので、オランダ東インド会社からの指示に従い、未確認の「テラ・アウストラリス」の海岸線を探査するために出帆しました。この航海は、オーストラリアの西海岸が既に発見されていたため、その先にある未知の大陸が存在するのかという疑問からスタートしました。1642年9月5日、タスマンの船団はモーリシャスに到着し、船の修理や船員の休息を経て10月8日に出航。11月24日には現在のタスマニアの西海岸に到達しました。彼はこの地をオランダ東インド会社の総督アントニオ・ヴァン・ディーメンにちなんで「ヴァン・ディーメンズ・ランド」と名付けました。

タスマンはタスマニアから北上を試みましたが、悪天候のため進めず、代わりに東に進路を変えました。この航路の結果、オーストラリア大陸を見逃すことになりますが、12月13日にはニュージーランドの南島に到達しました。彼はこの島を南アメリカのスターテン島の一部だと考え、「Staten Landt」と名付けました。しかし、ニュージーランドの水や食料の補給中に、マオリ族との衝突が発生し、数名が亡くなる事態に。タスマンはその場所を「Murderers湾」と名付け、後に北へと進みました。航海の最後にはトンガやフィジーを経て、1643年6月15日にバタビアに帰還しました。

1644年の航海

彼の2回目の航海は1644年に行われました。この航海では、ニューギニアの東と南海岸を巡り、トレス海峡を通り、オーストラリアの北海岸に沿って航行しましたが、新たに価値ある大陸や島を発見できませんでした。その後、オーストラリア南東地域での探検は、ジェームズ・クックによる発見まで1世紀以上中断されることになりました。

航海以降の活動

タスマンは1644年にバタビアの司法局のメンバーに選出され、1646年にはスマトラ訪問、翌年にはサイアム（現タイ）の王へオランダ東インド会社からのメッセージを運ぶ任務を果たしました。1648年にはスペイン船の拿捕を試みましたが失敗。さらに1649年には部下を無裁判で処刑したことで有罪となり、罰金と資格剥奪の処分を受けました。しかし、1651年には復職を果たし、後にバタビアで大地主としての人生を全うしました。

アベル・タスマンの探検は、彼の死後も歴史に名を刻み、それ以降の航海や探査の礎となりました。彼の名にちなんで名付けられた地名が、今もなお多く存在しています。

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