バタヴィア

バタヴィアの歴史と影響

バタヴィア、現在のインドネシアの首都ジャカルタは、オランダ植民地時代において重要な役割を果たしていた都市です。この都市の起源は12世紀に遡り、当時はスンダ・クラパという名前で知られていました。これはパジャジャラン王国の外港として、多くの商人が訪れる場所でありました。16世紀初頭には、ジャヤカルタやジャカトラといった名称にも呼ばれていました。

1602年にオランダ東インド会社がこの地域に貿易船を派遣し、バタヴィアという名前が使用されるようになったのは1619年のことです。当時の総督ヤン・ピーテルスゾーン・クーンがバンテン王国からジャヤカルタを租借し、以後オランダのアジアにおける拠点として発展しました。バタヴィアという名称は、古代ローマ時代のオランダ地域に住んでいたバターウィー族に由来しています。伝統的に日本ではこの都市が「ジャガタラ」という名で呼ばれていました。

17世紀末、バタヴィアは成熟した港町に成長していました。この頃には要塞や城壁が築かれ、運河が整備されていました。町には香辛料を保管する倉庫や小さなテラスハウス、酒場や売春宿が立ち並び、周辺には華僑などの外国人居住区も形成されていました。バタヴィアは中継貿易の要所として機能し、特に中国や日本との交易において重要な役割を担っていました。

しかし、赤道直下の高温多湿の気候は、移住したオランダ人にとっては厳しいものでした。マラリアやコレラ、デング熱などの熱帯病が流行し、18世紀にはバタヴィアが「墓場」と呼ばれるようになるほど、住民の健康を脅かしました。

1799年、オランダ東インド会社が解散すると、バタヴィアの総督の役割は貿易中心から行政中心にシフトしました。1808年、ヘルマン・ウィレム・ダーンデルス総督は新市街を建設することを決定します。これが「ウェルトフレーデン」と名付けられ、旧市街は「ベネデンスタッド」と呼ばれるようになりました。

バタヴィアの港は当初、外洋船が直に停泊できる条件ではありませんでしたが、1850年代には北側が埋め立てられ、小型船による荷揚げが行われるようになりました。1869年にスエズ運河が開通すると、バタヴィアは物流拠点としてさらに発展を遂げ、タンジュンプリオクに新港が建設されました。

日本の占領時代（1942年-1945年）には、都市名はジャカルタに改称され、その後の第二次世界大戦終了後、1945年にイギリス軍とオランダ軍が到着し、インドネシア独立戦争が始まりました。最終的に独立が達成され、スカルノ政権の下、ジャカルタという名称が正式に採用されました。

現在、バタヴィアの歴史的な地区であるコタトゥアには、当時の街並みが残り、観光名所として多くの人々に親しまれています。かつての華やかな商業と文化の交流の舞台は、今もなおその面影を留め、多くの人々に訪れられています。

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