アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ

アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(AOC)とは?



アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(AOC、Appellation d'Origine Contrôlée)は、フランスのワイン、チーズバターなど、様々な農産物に与えられる品質保証制度です。日本語では「原産地統制呼称」や「原産地呼称統制」と訳されます。AOC認証を取得するには、原材料の生産地、製造工程、最終製品の品質など、厳しい基準をクリアする必要があります。これらの基準を満たさない製品は、AOC名称の使用が法律で禁じられています。

AOC製品は、ラベルに印字された証印で識別できます。不正表示を防ぐため、AOC名称は、AOC基準を満たしていない製品には一切使用できません。生産者の住所がAOC名と一致する場合、郵便番号で代替表示が義務付けられます。

AOCの歴史



AOC制度の起源は、15世紀のロックフォールチーズの生産規制まで遡ります。近代的な法整備としては、1905年の「原料の偽装を取り締まる法律」と、1919年の「原産地保護に関する法律」が挙げられます。1925年には、この法律に基づきロックフォールチーズが最初のAOC認証を取得しました。

1935年には、ワイン製造工程の管理を目的として、フランス農林省傘下のフランス国立原産地名称研究所(INAO)が設立されました。INAOは生産者、消費者、行政官の三者で構成され、AOCの認定や運用などを行っています。

AOCのマークは、1950~70年代にかけて制定され、フランス法に基づき管理されてきました。1990年には、INAOの管轄範囲がワインから他の農産物にも拡大されました。

AOCが規定する最も重要な項目は生産地です。その範囲は、広大な地域を包含するものから、単一のに限定されるものまで様々です。コート・デュ・ローヌAOCは4万ヘクタールにも及ぶ一方で、シャトー・グリエAOCは4ヘクタールにも満たない規模です。

ワインにおけるAOC



ワインのラベルには必ず「Appellation Contrôlée」または「Appellation d'Origine Contrôlée」の表示が義務付けられています。「Appellation d'Origine」の部分には、ボルドー、メドック、マルゴーといった地方名、地区名、村名などが入り、ブルゴーニュワインでは名まで表記されます。

AOC法は、品質保持と産地名称の保護のため、ブドウ品種、最低アルコール度数、最大収穫量、栽培法、剪定法、熟成方法などを細かく規定しています。フランスワイン以外に、ブランデーラム酒にもAOCが適用されます。

AOCの規定(ワイン)



生産地域: 産地内で収穫されたブドウ100%を使用。
品種: 使用可能なブドウ品種が規定されている。
最低アルコール度数: 収穫期のブドウの糖度に規定あり。
最大収穫量: 1ヘクタールあたりの最大収穫量が規制。
栽培: ブドウの樹齢などに関する規定。
剪定: 産地やブドウの種類によって異なる。
醸造: ミュスカデ、ロゼワイン、シャンパンなど、ワインの種類によって規定が異なる。
熟成法: ボジョレーヌーボーの発売日や、発泡ワインの熟成法などが厳密に定められている。
* 試飲検査: すべてのAOCワインは試飲検査を受ける必要がある。

チーズにおけるAOC



チーズのAOCでは、ワインのように生産地を直接記入せず、円と楕円を組み合わせたラベルに「Appellation d'Origine Contrôlée」、産地名、チーズ名が個別に刻印されます。

AOCの規定項目はワインと同様に厳格で、原材料となる動物の飼育場所、チーズの製造・熟成場所、乳の種類、搾乳方法、凝固方法、加塩方法、菌種、熟成方法、サイズ、そして外観や風味に関する官能検査などが含まれます。

例えば、ロックフォールチーズは熟成から出荷までをロックフォール村内で行うことが義務付けられています。コンテチーズでは、毎年約5%のチーズがAOC基準を満たさず、AOC名で販売されないケースがあります。カマンベールチーズは、AOC取得が遅れたため、AOC認定以前から多くのコピーチーズが市場に出回っていました。そのため、カマンベールのAOCはノルマンディ産のカマンベール・ド・ノルマンディに限定されています。

AOCとEU制度



EU(欧州連合)では、AOP(Protected Designation of Origin)という原産地名称保護制度が確立されており、2009年5月以降、EU産の高品質農産物にはAOPラベルが義務付けられています。フランスのAOCは、AOPとほぼ同等の制度です。

まとめ



AOCは、フランス農業製品の品質と産地を厳格に保証する制度です。その歴史は古く、現在もフランスの食文化において重要な役割を果たしています。AOC認証を取得することは、生産者にとって大きな誇りであり、消費者にとってはその品質の信頼性の証となっています。AOCの厳しい基準をクリアした製品は、その高い品質によって、世界中の人々から高く評価されています。

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