アペンドストーリー

アペンドストーリー：家庭用ゲーム機における画期的追加コンテンツ配信システム

アペンドストーリーは、KID社がドリームキャスト用ゲームソフトに導入した、インターネット経由で追加シナリオを配信する画期的なシステムです。家庭用ゲーム機でインターネット接続機能を標準搭載したドリームキャストという環境を最大限に活かし、発売後のゲームに新たな物語を付加することで、ユーザーに長くゲームを楽しんでもらうことを目指しました。

システム概要と特徴

このシステムは、週に一度、公式サイトから新たなシナリオデータをダウンロードしてゲームに追加するというものでした。そのシナリオデータは、KID社が制作したものと、ユーザーから公募された二次創作シナリオが含まれていました。二次創作シナリオの中には、本編のストーリー展開を明らかにするネタバレを含むものもあり、それらは「ネタバレあり」と明記され、本編クリア後にプレイすることを推奨していました。

追加シナリオは、ゲーム本編のグラフィックや音楽データしか使用できないという制約がありました。そのため、音声は再生されませんでしたが、この制約を逆手に取った、ユニークなシナリオも制作されました。シナリオデータはビジュアルメモリに保存され、インターネット接続がない場合でも、KID社の他のゲームソフトに「おまけデータ」として収録されている場合があり、そちらから入手することも可能でした。

ドリームキャスト版でアペンドストーリーを採用したゲームソフトは、後にPlayStation 2に移植されました。PS2移植版では、インターネット経由での配信ではなく、パッケージにアペンドストーリーの全データが収録されているため、インターネット環境がなくても追加シナリオを楽しむことができました。ただし、PS2移植版でも音声は追加されず、静止画とテキストのみでの展開となります。

企画の経緯と背景

アペンドストーリーの企画は、ドリームキャストのネットワーク機能を活かしたゲーム開発の検討から始まりました。当初は、ユーザーが自由にシナリオを作成し配信できるシステムの開発が構想されましたが、開発・サポート面での困難さから断念されました。

しかし、ユーザー参加型のシナリオ募集というアイデアは残されました。ユーザーが作成したシナリオを、単独の商品ではなく、既存ゲームへの追加コンテンツとして提供するという形に企画が変更され、アペンドストーリーが誕生しました。

予想をはるかに超える反響があり、シナリオ選考には苦労が伴ったものの、特に初期導入作品である『Never7 -the end of infinity-』の売り上げを伸ばす上で大きな役割を果たしました。同人作家との連携強化にも貢献したと言えるでしょう。しかし、『Ever17』以降は、ゲームの世界観の設定が複雑化し、追加シナリオ作成の難易度が高くなったことから、アペンドストーリー企画は終了しました。

2006年12月1日のKID社の倒産により、アペンドストーリーの新たなシナリオ配信は終了しました。

アペンドストーリー対応ソフト

アペンドストーリーを採用した代表的なゲームソフトは以下の通りです。

Never7 -the end of infinity-（PS2移植版でほぼ全アペンドストーリー収録）
夢のつばさ Fate of Heart
Memories Off 2nd（PS2版『Memories Off Duet』で全アペンドストーリー収録）
My Merry May（PS2版『My Merry May with be』で全アペンドストーリー収録）

アペンドストーリーは、発売後のゲームに新たな価値を付加し、ユーザーとの繋がりを深める試みとして、ゲーム業界に大きなインパクトを与えました。インターネットとユーザー参加型コンテンツの可能性を示した、先駆的なシステムとして、今も記憶されています。

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