アポロPAT-2

アポロPAT-2（Pad Abort Test-2）は、アポロ計画において実施された2回目の緊急脱出用ロケットの試験です。この試験の目的は、ロケットの打ち上げ時に緊急事態が発生した場合、宇宙飛行士を安全に脱出させるためのシステムであるLES（Launch Escape System：緊急脱出用ロケット）の性能を検証することでした。

LESの機能

LESは、ロケットに異常が検出された際に自動的に作動します。まず、主モーターに点火し、司令船を速やかに安全な高度まで上昇させます。同時に、頂上部に設置されたピッチ・モーターが角度を調整し、機体を斜め方向に進めます。主モーターの燃焼が終了し、十分な高度に達すると、カナード（小翼）が展開し、司令船の底部が進行方向に向くように姿勢を安定させます。その後、LESは司令船全体を覆う保護カバーと共に切り離され、司令船は3基のパラシュートを展開して安全な地点に着陸します。この一連の動作が、緊急脱出の基本的な流れです。

実験の詳細

PAT-2の実験では、司令船の模型としてA-002で使用されたものが再利用されました。この模型は、重量や特性が実際の宇宙船に近い形で再現されており、より実用的な条件下での試験が可能でした。また、パラシュートにはA-003で使用されたものが再利用されました。実験は1965年6月29日13:00:01（UTC）に、ホワイトサンズ・ミサイル実験場で行われました。

実験では、まず主モーターとピッチ・モーターが同時に点火され、機体は計画通りの軌道で上昇しました。機体の形状の不均衡により、わずかなロール（回転）運動が発生しましたが、実験に影響を与えるレベルではありませんでした。カナードが展開し、司令船の底部が進行方向に向けられると、LESは司令船の保護カバーとともに予定通り切り離されました。保護カバーは、空気抵抗により予想通りに破壊されました。パラシュートが展開するまで、切り離された機器同士が接触したり、干渉したりするような現象は観測されませんでした。

パラシュートの展開時に、ワイヤーの一本がもつれるというトラブルが発生しましたが、着陸全体には大きな支障はありませんでした。機体の最大高度は2.82kmに達し、これは計画よりも約200m高い値でした。司令船は発射台から2.32km離れた地点に着陸しました。

実験では、宇宙船の窓が設置される予定の場所に4枚のガラス板を設置し、排気ガスなどの影響を調査しました。その結果、排気ガスの煤煙が付着するなどの影響は認められませんでした。しかし、3枚のガラスには油膜が付着しているのが確認されましたが、実験に支障をきたすほどのものではありませんでした。

実験の成果

PAT-2の実験は、全体として非常に満足のいく成果を上げ、成功裏に終了しました。LESの性能が確認され、緊急脱出システムの信頼性が向上したことは、その後のアポロ計画の安全性確保に大きく貢献しました。

参考：Apollo Maniacs（アポロ・マニアックス）

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