アマゾン・パブリッシング

アマゾン・パブリッシングとは

アマゾン・パブリッシングは、2009年にAmazon.comが設立した書籍出版部門です。AmazonEncore、AmazonCrossing、Montlake Romance、Thomas & Mercer、47Northなど、多数のインプリントを傘下に抱え、幅広いジャンルの書籍を出版しています。また、Kindle ダイレクト・パブリッシングを通じて電子書籍の出版も行っています。

歴史

2009年：AmazonEncoreの設立

2009年5月、アマゾンは最初の主力インプリントとして「AmazonEncore」を開始しました。このインプリントは、絶版になった書籍や、自費出版されたものの売れる可能性のある書籍を再出版することを目的としています。最初の出版は、2009年8月の『Cayla Kluver's Legacy』でした。その後も、Robert Kroeseの『Mercury Falls』、J.A. Konrathの『Shaken』、John Rectorの『The Grove』、Karen McQuestionの『A Scattered Life』など、多くの書籍が出版されました。

2010年：AmazonCrossingの設立

2010年5月には、翻訳作品を専門とする「AmazonCrossing」が設立されました。最初の翻訳書は、フランス語小説『カヘルの王』とドイツ語小説『ハングマンの娘』で、それぞれ2010年11月と12月に発売されました。

2011年：ジャンル特化型インプリントの設立

2011年5月、アマゾンはジャンルに特化した2つのインプリント、「Montlake Romance」と「Thomas & Mercer」を設立しました。「Montlake Romance」はロマンス小説、「Thomas & Mercer」はミステリー小説を専門としています。また、自費出版プラットフォーム「Powered by Amazon」も開始され、作家が独自のインプリント名でシリーズ本を出版することが可能になりました。セス・ゴーディンは「The Domino Project」というインプリントを設立し、一連のマニフェストを出版しましたが、2011年11月に終了しました。同年には、タイムワーナーブックグループの元CEOであるラリー・カーシュバウムが新たな総合インプリントのトップとしてアマゾンに入社し、10月にはSF、ファンタジー、ホラーを扱う「47 North」が設立されました。さらに、12月にはマーシャル・キャベンディッシュから子供用絵本のタイトル450冊以上を買収しました。

2012年：ニューヨーク拠点の開設とAvalon Books買収

2012年1月、アマゾン・パブリッシングはニューヨークに拠点を置き、仮名で「New Harvest」というインプリントを販売するためにHoughton Mifflin Harcourtと提携しました。この取り組みにより、アマゾンは自社のインプリントを、競合であるバーンズ・アンド・ノーブルなど、アマゾンのインプリントを販売しない小売店で販売できるようになりました。しかし、バーンズ・アンド・ノーブルは後にアマゾンのインプリントを扱わないことを発表し、他の書店も同様の措置を取りました。同年6月には、ロマンスとミステリーに特化した出版社「Avalon Books」を買収し、約3,000冊の在庫目録を加えました。11月には、ローレンス・カーシュバウムが「シアトルとニューヨークの大人向け・子供向けインプリントの編集担当トップ」に昇進し、ヨーロッパにおける出版部門の立ち上げも発表されました。12月には、アマゾンの部門であるBrilliance Audioが自己啓発とインスピレーションに特化した「Grand Harbor Press」を設立しました。

2013年：児童書インプリントと文芸誌の創刊

2013年1月、アマゾンは子供向けと青少年向けの2つのインプリント、「Two Lions」と「Skyscape」を設立しました。「Two Lions」は絵本や児童書を、「Skyscape」は青少年向けフィクションを出版しています。3月にはニューヨークを拠点とする文芸フィクションインプリント「Little A」を発表し、小説、短編小説、回想録を出版しました。また、7月には漫画とグラフィックノベルのインプリント「Jet City Comics」も設立されました。10月には、週刊デジタル文芸雑誌「Day One」を創刊し、短編小説や詩、新規著者や翻訳作品を紹介しました。この雑誌はKindleデバイスでアクセス可能で、作家の紹介、インタビュー、イラスト、プレイリストなども含まれていました。

2014年：ドイツ語部門の設立

2014年3月には、ドイツのミュンヘンにドイツ語部門を開設しました。アマゾンは、これにより「ドイツ語のフィクションを購入し、Kindleで利用できるようにし、アマゾンのウェブサイトで印刷版を入手できるようにする」と述べています。

Weathervane

アマゾンは、1999年のクリスマスシーズンに、幻となったインプリント「Weathervane」を通じて出版を試みましたが、販売不振によりすぐに消滅しました。これは、アマゾンにとって最初の出版の試みでした。

発行者

2012年にアマゾン・パブリッシングが設立された時の最初の発行者は、ラリー・カーシュバウムでした。しかし、2014年1月に退社しました。その後、ダフネ・ダーラムが後任を務めましたが、1年後に退社しました。2015年1月16日にはミキーラ・ブルダーが発行者となり、大半のインプリントを担当しています。さらに、デイビッド・ブラムがLittle AとTwo Lionsのインプリントを担当する発行者兼編集長に任命されました。

インプリントリスト

以下は、アマゾン・パブリッシングが持つ主なインプリントの一覧です。

AmazonEncore
AmazonCrossing
Montlake Romance
Thomas & Mercer
47 North
New Harvest
Two Lions
Skyscape
Little A
Jet City Comics
Grand Harbor Press

批判

ザ・ニューヨーカーの2014年の記事で、ジョージ・パッカーはアマゾン・パブリッシングの書籍の多くが期待以下であると批判しています。例として、アマゾンはティモシー・フェリスの『4時間制シェフ』を100万ドルで、ペニー・マーシャルの回想録『私の母は狂っていた』を80万ドルで買収しましたが、マーシャルの回想録は17万部しか売れませんでした。また、ジェームズ・フランコの小説『アクターズ・アノニマス』も5万部も売れませんでした。パッカーは、アマゾンが直接の競争相手であるため、書店がアマゾンの作品を販売することを拒否していること、出版社の無能さ、アマゾンの大量製品文化が出版業界と合わなかったことを指摘しています。

参考文献

公式ウェブサイト
The Truth About Amazon Publishing
Uncovering Amazon Publishing

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