アマツバメ

アマツバメ（雨燕）

アマツバメ（Apus pacificus）は、アマツバメ目（またはヨタカ目）アマツバメ科に分類される鳥類です。種小名の pacificus は「太平洋の」という意味で、英名（Pacific swift）も同様の意味を持ちます。

分布

夏季には、中国、日本、ロシア南東部、ヒマラヤ山脈などで繁殖します。冬季は東南アジアやオセアニアで越冬します。日本には、夏鳥として基亜種と亜種アマツバメが飛来し、それぞれ北海道と本州、四国、九州で繁殖します。

形態

全長は19-20cm、翼開長は約43cmです。尾羽はアルファベットの「V」字状をしています。全身は黒や黒褐色の羽毛で覆われており、下面には白い横縞が入ります。喉と腰は白い羽毛で覆われており、これが英名（white-rumped swift＝白い尻をしたアマツバメ）の由来となっています。

分類

2011年には、形態的特徴から Apus cooki、Apus leuconyx、Apus salimalii が独立種として分割されました。

亜種の分類と分布は、IOC World Bird List (v10.1) に準拠しています。しかし、2019年の Clements Checklist (v2019) では、中国東部、台湾、日本南部、フィリピン北部で繁殖する亜種アマツバメ A. p. kurodae と基亜種の2亜種のみとする説が採用されています。

Apus pacificus pacificus (Latham, 1802): シベリアからカムチャツカ半島、中国北部、日本に分布
Apus pacificus kanoi (Yamashina, 1942): チベット南東部から中国東部、台湾に分布
A. p. kanoi は、より早く記載された A. p. kurodae のシノニムとする説があります。一方で、A. p. kurodae を基亜種のシノニムとする説もあります。A. p. kurodae の模式産地は単に「日本」とされていますが、模式標本は第二次世界大戦で消失しています。

生態

高山帯や海岸の断崖などに生息し、渡りの際には平地や市街地でも見られます。垂直な壁面にしがみつくように止まりますが、地面に降りると歩いたり、羽ばたいて飛び立つことは苦手です。食性は動物食で、昆虫類を捕食します。驚くべきことに、交尾や睡眠も飛びながら行うことがあります。

繁殖様式は卵生です。断崖に、空中で集めた枯草などを唾液で固めた皿状の巣を作り、日本では6 - 8月に1回に2-3個の卵を産みます。雌雄交代で抱卵し、抱卵期間は約40日です。

アマツバメの飛行速度は169km/hに達することがあり、鳥類の中でも最速の部類に入ります。

参考文献

安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社、2008年、40-41頁。
五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、文一総合出版、2004年、103頁。
黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科8　鳥II』、平凡社、1986年、102、105、161頁。
高野伸二編 『山溪カラー名鑑 日本の野鳥 特装版』、山と溪谷社、1985年、353頁。
高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会、2007年、204-205頁。
中村登流監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年、55、172頁。
真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、377頁。
『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、76頁。

関連項目

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