アマティ (楽器メーカー)

アマティ（Amati Kraslice）

アマティは、チェコ共和国の楽器製造会社です。工房は、チェコのドイツ国境に近い町、クラスリッツなどにあります。金管楽器、木管楽器、打楽器と幅広い楽器を製造しており、特に日本ではファゴットなどのメーカーとして知られています。また、チンバッソやヘリコーンといった珍しい管楽器を数多く製造しているのも特徴です。過去には、日本では生産中止となったベルダウンのメロフォンも製造していました。

歴史

第二次世界大戦以前、クラスリッツ（ドイツ語名：グラスリッツ）は、ズデーテン地方に位置し、チェコスロバキアの一部でありながらドイツ人が多く住む町でした。この町には、Hüller & Co、Bohland & Fuchs、A.K. Hüttl、ユリウス・カイルヴェルトなど、59もの楽器製造工房が存在していました。しかし、戦時中にはこれらの工房の多くが軍需品の生産に転用されたり、操業停止を余儀なくされました。

戦後、ドイツ語を話すクラスリッツの住民の多くはドイツへ追放され、残ったのはほとんどがチェコ民族でした。追放された楽器メーカーの中には、ドイツのMusikwinkelのように別の場所で事業を継続する会社もありました。クラスリッツに残った楽器製造者たちは、協同組合を組織し、バイオリン製造で有名なアマティ家の名前にちなんで「Amati」と名付けました。1948年、新たに成立した共産主義政権によって、アマティは他の製造業や農業と同様に国営化されました。

1993年にアマティは民営化され、社名に「Dechové nástroje Kraslice（Wind Instruments Kraslice）」の頭文字を取った「Denak」を加えました。現在では、ヨーロッパで3大楽器メーカーの一つとなり、アマティ、Stowasser、V. F. Červený & Söhneという独立したブランドを所有しています。

アマティの従業員は約200名で、主な工場はチェコ西部のクラスリッツにあり、木管楽器と金管楽器を製造しています。第二工場はフラデツ・クラーロヴェーにあり、V.F. Červenýのロータリーバルブ楽器はここで製造されています。アマティでは工場見学も受け付けており、楽器製造の全工程を見学できます。

しかし、アマティは安いアジア製品との競争、熟練工や取引先の不足、度重なる身売りなどに苦戦しています。

近況

2019年11月、裁判所はアマティの破産を宣告しました。負債額は1億4,000万チェコ・コルナ以上に達し、自力での再建は困難とされました。イギリスの親会社は、2019年末に全従業員を解雇し、会社を清算する意向を示しました。しかし、アマティの買収に興味を示す企業が数社現れ、35名の従業員が解雇されたものの、残った115名の従業員によって楽器の生産は継続されました。

2021年2月、RIQ Investmentsという投資会社が新たな親会社となりました。アマティの資産価値は1億3,150万チェコ・コルナと見積もられていましたが、最終的に2,650万チェコ・コルナで売却されました。破産管財人によると、売却額は資産価値に遠く及ばなかったものの、今回の競売は成功だったとされています。新型コロナウイルスの感染拡大により、アマティ買収への関心が低かったためです。

「できる限りの企業に声をかけましたが、当初は関心を示していたヨーロッパの大手メーカーでさえも、結局は手を挙げませんでした。彼らは売れ残りの在庫を抱えた状況で、生産量を増やす必要がなかったのです。」と破産管財人は述べています。

チェコ第2の都市ブルノに拠点を置くRIQ Investments社は、楽器業界では新参者であり、不動産や水力発電への投資、採掘場の経営など他の事業も手掛けています。

しかし、2021年4月には、最大の債権者であるUniCredit Bankが買収額を不服として売却を撤回しました。RIQ Investments社は法的措置を検討しています。

2022年3月現在、社名はAMATI Krasliceに変更され、同社のウェブサイトには以下の記述があります。

「2021年、外国のオーナーによる利益重視の経営によって、アマティは破産寸前の状態に陥りました。しかし、新しいオーナーがアマティを救い、協同組合へと転換させました。同時に、彼はアマティに1億チェコ・コルナ以上の投資を行い、失われた栄光と世界的な名声を取り戻そうとしています。」

脚注

注釈・出典

関連項目

木管楽器

外部リンク

AMATI Kraslice - 公式Webサイト
オーボエ・バスーン（ファゴット）の専門店：日本ダブルリード - 日本における取扱店の一つ
山野楽器 - 日本総代理店

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