アマールと夜の訪問者

『アマールと夜の訪問者』とは

『アマールと夜の訪問者』（Amahl and the Night Visitors）は、イタリア系アメリカ人の作曲家ジャン＝カルロ・メノッティが作曲した1幕のオペラです。メノッティ自身が英語の台本も手掛けており、その親しみやすい音楽と心温まるストーリーは、多くの人々に愛されています。

この作品は、1951年12月24日にNBCテレビで初演され、テレビ放送のために作られたオペラとしてはアメリカで最初の作品となりました。初演は、ホールマーク・ホール・オブ・フェイムの初回放送演目としても知られています。現在では、クリスマスシーズンには欠かせない定番オペラとして世界各地で上演されています。

日本語では、『アマールと夜の訪問者たち』『アマールと夜の来客』『アマールと三人の王様』『アマールと三人の博士』など、さまざまな訳題で呼ばれています。

登場人物

アマール: 少年。ボーイソプラノで歌われることが多いですが、成人女性ソプラノが演じることもあります。
アマールの母: メゾソプラノまたはソプラノで歌われます。
カスパール王: テノールで歌われます。
メルキオール王: バリトンで歌われます。
バルタザール王: バスで歌われます。

その他、従者や羊飼いたち（合唱）、踊る羊飼いたち（ダンサー）が登場します。

あらすじ

物語の舞台は紀元1世紀のベツレヘム近郊。足が不自由な少年アマールは、おしゃべり好きで、時々ほら話をすることがありました。ある夜、アマールは空に大きな星が出ていると母親に話しますが、信じてもらえません。

その夜遅く、ドアをノックする音が聞こえ、アマールが戸口を開けると、そこには豪華な身なりの3人の王様が立っていました。王たちは、遠い場所で生まれた特別な子供に贈り物をするために旅をしている途中であり、しばらくの間、アマールの家で休ませて欲しいと告げます。母親は村人たちの協力を得て、王たちをもてなしました。

夜が更け、母親は、もし可能ならば、貧困から抜け出すために王たちが持ってきた黄金を盗もうとしました。しかし、王の従者に気づかれてしまい、アマールは母親をかばいます。それを見たメルキオール王は、「この黄金は、神の子を救う為に使う必要はない」と言い、母親に黄金を返します。

母親は、神の子に何も贈り物をできないことを嘆きます。すると、アマールは自分の松葉杖を差し出しました。その瞬間、アマールの足が癒え、3人の王様と共に、神の子に会うための旅に出る、という心温まる物語です。

上演・放送史

メノッティは、この作品を放送用オペラとして構想しました。彼は、「テレビで再放送されれば幸運だ。オペラを制作することは大変な苦労なのに、たった一度の放送で終わってしまうのは馬鹿げている」と語っています。

『アマールと夜の訪問者』は、テレビ史上初のクリスマス恒例特番とも言える存在になりました。1951年から1966年の間、NBCテレビは毎年クリスマス・イブ前後にこの作品を放送し続けました。メノッティ自身が番組冒頭に登場し、物語の解説をしていました。

初期の放送は白黒でしたが、1953年初頭にはカラー化されました。アメリカ国外でも吹き替え版が放送されています。長らくオリジナルの保存フィルムは紛失したと考えられていましたが、現在はペーリー・メディアセンターで閲覧可能です。

1963年にはキャストを一新し、ビデオ収録されました。また、1978年にはベツレヘムでのロケを含む新たなバージョンが制作されました。1955年と1978年制作のものはビデオ版でリリースされています。サウンドトラックは1951年と1963年制作のものがレコード化され、1951年版はCD化もされています。

BBCバージョン

BBCは1950年代に2本の『アマール』を制作しました。1955年の最初のバージョンは生放送であったため、映像は残っていませんが、1959年のバージョンは現存しています。2002年には3作目が放送される予定でしたが、権利問題により中止となりました。

日本での上演

日本では、1954年に二期会によって初演されました。テレビ番組としてではなく、ファミリー向けオペラとして劇場などで上演されています。

アマールのオーボエのソロ、アマールと母の二重唱、3人の王様のアンサンブルなど、ライブならではの魅力があります。また、小規模な劇場でも上演しやすいため、市民オペラや学校、宗教施設などでも取り上げられることが多いです。日本ではアマール役を成人女性のソプラノが演じることが一般的ですが、ボーイソプラノを起用した公演も行われています。

脚注

[1] 参考資料: (具体的な参照元情報は削除)

外部リンク

Chet Allen（1951年-1952年のアマール）Boysoloist.com
Bill McIver （1952年-1955年のアマール） Boysoloist.com
Kurt Yaghjian（1963年-1966年のアマール）Boysoloist.com
Robert Sapolsky（1978年のアマール）Boysoloist.com
Pablo Strong（2002年のアマール）Boysoloist.com
ビル・マッキーバー出演版のビデオ（部分）
ミルウォーキー・オペラ座での上演

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