アムステルダム音楽院

オランダの首都アムステルダムに所在する権威ある音楽教育機関「アムステルダム音楽院（Conservatorium van Amsterdam）」は、国内最大の規模を誇る高等音楽院です。1884年の創立以来、音楽教育の中心として機能しており、現在は芸術系職業大学であるアムステルダム芸術職業大学の一翼を担っています。クラシック音楽はもとより、ジャズ、ポップス、古楽、オペラ、そして音楽教育に至るまで、幅広いジャンルに対応した多様なカリキュラムを提供し、世界中から集まる学生たちに高度な専門教育を行っています。

設立と歴史

アムステルダム音楽院の歴史は、有名なコンセルトヘボウが完成する数年前にあたる1884年に設立された「アムステルダムシュ音楽院」に遡ります。その後、1920年には「ムジークリセウム協会」が別の音楽学校を設立するなど、アムステルダムには複数の音楽教育機関が存在しました。現代のアムステルダム音楽院が形作られたのは、1976年にこれらアムステルダムシュ音楽院とムジークリセウム協会の音楽院、さらにハールレムス・ムジークリセウムが統合され、「スウェーリンク音楽院」が誕生した時です。このスウェーリンク音楽院はファン・バールレ通りにキャンパスを構えました。さらなる再編を経て、1994年にはヒルフェルスム音楽院との合併により、現在の名称であるアムステルダム音楽院となりました。長らくファン・バールレ通りとニーウェファールトに校舎が分散していましたが、2008年にはアムステルダム中央駅近くのオーステルドクス島に建設された新しいキャンパスへと移転し、教育環境を刷新しました。

キャンパス設備

2008年4月21日に開校したオーステルドクス島の新キャンパスは、駅からのアクセスも良く、文化施設の集まるエリアの中心に位置しています。オランダの建築家フリッツ・ヴァン・ドンゲン氏によって設計されたこの建物は、日本建築の「縁側」からインスピレーションを得た独特の構造が特徴です。外壁と主要な部屋（コンサートホール、講義室、レッスン室など）の間に廊下を配置することで、外部の騒音を遮断し、学生が学習に集中できる環境を作り出しています。また、大きな窓からは自然光が豊かに差し込み、明るく開放的な空間となっています。キャンパスは機能別に大きく3つのエリアに分かれています。地上階は主にホール区画となっており、大小合わせて4つのコンサートホールを備えています。

- ベルナルド・ハイティンクザール: 最大のホールで450席。コンサートホールとしては珍しく窓があり、自然光が入ります。
- アムステルダム・ブルーノート: ジャズやポップスに特化したホールで200席。
- スウェーリンクザール: 主にリサイタルに使用され、120席。こちらも自然光を取り込む窓があります。
- テアターザール: 最も小規模で50席。

これらのホールはすべて高音質の録音設備を備えており、学生や教員の演奏活動を記録することが可能です。地上階には広々としたホワイエや学生食堂も併設されています。ホール区画の上層、4階分は講義室やレッスン室が配置されており、さらにその上には2階層にわたる図書館、講堂、自習室エリアがあります。建物の音響設計は、専門機関であるポイツ音響研究所が担当し、各空間に最適な音響環境が実現されています。新キャンパスは最新の設備を備えており、学生自身がコンサートを企画・開催したり、アムステルダム芸術職業大学の他学部の学生と共同でプロジェクトを行ったりすることが容易になりました。コンサートのポスターやチラシ作成、チケット販売、演奏の録音・録画はもちろん、音楽院のウェブサイトを通じてインターネットラジオを配信するなど、多角的な活動を支援しています。

著名な関係者

アムステルダム音楽院からは多くの優れた音楽家や教育者が輩出されています。現在教鞭を執る著名なヴァイオリニストとしてはボリス・ベルキン氏が挙げられます。また、歴代の名誉教授には、ヴァイオリンのオスカー・バック氏やヘルマン・クレバース氏、ピアニストのマレイ・ペライア氏、チェンバロ・オルガン奏者のグスタフ・レオンハルト氏、作曲家のトン・デ・レーウ氏など、音楽史に名を刻む巨匠たちが名を連ねています。

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