アムリットサル事件

アムリットサル事件

アムリットサル事件、またの名をジャリヤーンワーラー・バーグ事件は、1919年4月13日にインドのパンジャーブ地方アムリットサルで発生した虐殺事件です。この事件では、イギリス領インド帝国軍が非武装の市民に対して無差別な発砲を行い、結果として多くの人命が奪われました。

背景

イギリスは長い間、インドを植民地支配し、その支配を拡大してきました。1757年のプラッシーの戦いを経て、インドにおける権力を強固にし、様々な戦争を通じて地域の支配者たちの力を削ぎました。1857年のインド大反乱は、一時的にムガル帝国の復権を目指しましたが、結局イギリスはこれを鎮圧し、全土の直接統治を開始しました。

第一次世界大戦後、イギリスはインドに対する自治の約束をしましたが、実際には形式上のものに過ぎず、1919年に施行されたローラット法により、インド人市民は重大な権利を剥奪されました。この法は、令状なしでの逮捕や裁判なしの投獄を可能にし、多くの人々が不満を抱えることとなりました。

事件の概要

1919年4月、アムリットサルでは重大な暴動が発生し、それに対抗する形で治安部隊が投入されました。集会が禁止されたにもかかわらず、4月13日、約1万2千人の市民が集まり、民族指導者の逮捕に抗議しました。参加者は全員非武装であり、女性や子供も多く含まれていました。

しかし、イギリス軍のレジナルド・ダイヤー准将は、グルカ兵を指揮し、集会に参加していた人々に対して無慈悲な発砲を開始しました。銃撃は10分から15分間続き、逃げる人々を背後からも撃ち続け、多くが死亡または負傷しました。事件の結果、死者は推定3千人を超え、さらに多くの負傷者が出ました。この残虐行為は、瞬く間にインド全土に衝撃を与え、反英運動の激化を招くこととなります。

事件に関する証言も数多く残されています。目撃者は、群衆がいかに無防備であったかを強調し、逃げようとした人々に対する無情な銃撃を語っています。この日の事実は、8ヶ月もの間隠蔽され、真実が明かされることはありませんでした。

事件後の影響

アムリットサル事件後、インド全土には戒厳令が敷かれ、政府は厳しい弾圧を続けました。特に、マハトマ・ガンディーの非暴力抵抗運動はこの事件を契機に大きく変化し、インド独立への道を切り開く重要な転機となりました。

ダイヤー准将の行動は、イギリス政府からも批判されましたが、彼に対する処罰は限定的でした。1940年には、事件の生存者によってその背後にいる責任者が暗殺されるという事件も起きました。

現代における評価

2013年、当時の首相デービッド・キャメロンは初めて事件の現場を訪れ、この事件がイギリスの歴史において非常に恥ずべきものであると認めましたが、明確な謝罪は行わなかったため、批判の的となりました。アムリットサル事件は、過去の植民地支配の暗い側面を示す重要な歴史的事実であり、今なお多くの人々に深い影響を与え続けています。

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