アメデ・ルイ・ミシェル・ルペルティエ

サン＝ファルジョー伯爵アメデ・ルイ・ミシェル・ルペルティエ

サン＝ファルジョー伯爵アメデ・ルイ・ミシェル・ルペルティエ（Amédée Louis Michel Lepeletier, comte de Saint-Fargeau）は、1770年10月9日に生まれ、1845年8月23日にこの世を去ったフランスの著名な昆虫学者です。彼は、激動の時代にありながらも、一貫して昆虫学の研究に情熱を注ぎました。

彼は由緒ある家柄の出身でした。曽祖父のミシェル・ロベール・ルペルティエはルイ15世の治世において財務を運営する要職にあり、父もまたパリ高等法院の院長を務めた人物です。しかし、フランス革命期に入ると、彼の家族は歴史の波に大きく翻弄されます。兄のルイ＝ミシェル・ルペルティエ（1760-1793）は、フランス革命の推進派としてルイ16世の処刑に賛成するという極めて政治的な立場を取りました。その結果、彼は1793年にパリのヴァンドーム広場に近いパレ・ロワイヤルで、パリスという男にサーベルで脇腹を刺され、わずか33歳で暗殺されるという悲劇的な最期を遂げました。この時、彼は一人娘を残しています。また、もう一人の兄フェリックス・ルペルティエもまた政治活動に深く関わっていたことが知られています。このような家族の激動とは対照的に、アメデ自身は政治の世界から距離を置き、ひたすら昆虫学の研究に没頭するという選択をしました。

彼の学術的な貢献は、主にハチ目（Hymenoptera）の研究に集約されます。彼はこの昆虫群の分類と記載に精力的に取り組みました。その主要な成果の一つが、著書『ハチ目の昆虫の自然史』（"Histoire naturelle des insectes hyménoptères"）です。この著作は、1836年から1846年にかけて出版された、当時の主要な自然科学叢書である"Suites à Buffon"（ビュフォンの著作を補完し、自然界の三界を網羅する目的で、著名な博物学者や著述家によって執筆された一連の書籍）の一冊として世に出されました。この著作では、ハチ目の多様な種が詳細に記述され、その分類体系の構築に貢献しました。

彼は他にもいくつかの重要な著作を残しています。例えば、1823年から1825年にかけて出版された"Monographia tenthredinetarum, synonimia extricata"では、ハバチ類の研究を行っています。また、1832年には特定の属に関するモノグラフ"Memoires sur le G. Gorytes Latr. Arpactus Jur."を発表しました。初期の著作としては、1806年の"Mémoire sur quelques espéces nouvelles d’Insectes de la section des hyménoptères appelés les portetuyaux et sur les caractères de cette famille et des genres qui la composent"があり、これはハチ目の特定のグループに関する新しい種と分類学的特徴を扱ったものです。ジャン・ギヨーム・オディネ＝セルヴィルとの共著で、ギヨーム＝アントワーヌ・オリヴィエによる百科事典的な自然史著作群の一部として、カメムシ目（Hemiptera）に関する論文も執筆しています。興味深いことに、彼の初期の著作には、1796年から1797年にかけて出版された兄フェリックスの弁護に関する"Défense de Félix Lepeletier"という、昆虫学とは直接関係のない著作も含まれており、家族との繋がりを示すものとなっています。

学術団体においても積極的に活動しました。彼は1832年に創設されたフランス昆虫学会（Société entomologique de France）の創立会員の一人であり、その設立に尽力しました。さらに、翌年の1833年には同会の会長を務め、フランスにおける昆虫学の発展に指導的な役割を果たしました。

サン＝ファルジョー伯爵アメデ・ルイ・ミシェル・ルペルティエは、政治の混乱とは無縁の地で、地道かつ着実に昆虫学、特にハチ目の研究を進め、その後の昆虫学の発展に欠かせない基礎を築いた人物として記憶されています。彼の残した膨大な記述と分類学的成果は、今日の昆虫研究においても重要な資料となっています。

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