アメリカアリゲーター

アメリカアリゲーター（Alligator mississippiensis）

アメリカアリゲーターは、アリゲーター属に属するワニの一種で、別名ミシシッピワニとも呼ばれています。この種は主にアメリカ合衆国の南部に分布し、アーカンソー州、アラバマ州、サウスカロライナ州、ジョージア州、テキサス州、ノースカロライナ州、フロリダ州、ミシシッピ州、ルイジアナ州などに生息しています。アメリカアリゲーターは水辺の環境に適応した生活を送り、特に沼沢地などの湿地帯が好まれます。

形態

アメリカアリゲーターの雄は通常、おおよそ400cmの全長を持ち、最大で580cmに達することがあります。口吻はやや長く、側面が扁平で幅広い形をしているのが特徴です。また、頸部には4枚の鱗板が存在します。体色は緑がかった黒褐色で、幼体は背面に黄色い横縞があります。この種の前肢には指の半分ほどまで水かきがあり、後肢の趾の先にも水かきがあります。

生態

生息環境は主に湿地や沼地に限られ、冬季に気温が低下する地域では冬眠を行います。食性は雑食で、主に魚類を中心に、カメ、鳥類、小型哺乳類、昆虫、甲殻類、貝類など多岐にわたります。特に大型個体は、シカやイノシシ、さらにはクマやピューマを襲うことも報告されています。繁殖は卵生であり、6月から7月にかけて土や枯草、落ち葉などを用いて巣を作り、20〜60個の卵を産みます。卵は50〜60日で孵化し、性別は発生時の温度によって決まります。具体的には、32℃以上であればオス、30℃以下であればメスとなるため、環境によって性比が変動します。メスは卵や幼体をしばらく保護し、8年で性成熟を迎えます。野生下では35から50年の寿命を持ちます。

人間との関係

アメリカアリゲーターは基本的におとなしい性質を持つものの、ペットを捕食したり、稀に人間を襲ったりすることもあります。しかし、都市開発や水質汚染、皮革目的の乱獲などが原因で生息数が減少しました。1967年には絶滅危惧種として指定され、1973年からは法的にも保護される対象となりました。その後、調査や監視活動、狩猟や皮革流通の許可制が導入されるなどの保護措置が進められ、皮革の需要が減少したことで生息数は回復の兆しを見せました。1987年には絶滅危惧種から外れ、2005年からはミシシッピ州において許可制で狩猟が認められるようになりました。

特に注目すべき事例

2020年5月には、モスクワ動物園で飼育されていたアメリカアリゲーターの「サターン」が84歳で死去したとの発表がありました。アメリカアリゲーターは一般に野生では50歳を超えることはほとんどないため、84歳という年齢は驚くべきものでした。サターンはアメリカで生まれ、その後ドイツの動物園で飼われていましたが、1943年の空襲で脱走し、1946年にイギリス軍兵士に見つかりソビエト連邦に引き渡されました。その後、サターンはダーウィン博物館に剥製され、一般に公開されることが予定されています。

アメリカアリゲーターは、その独特な生態、繁殖様式、また人間との関係においても非常に興味深い存在であり、適切な保護と管理が求められています。

もう一度検索