アメリカグマ

アメリカグマ（Ursus americanus）

アメリカグマは、食肉目クマ科クマ属に分類される哺乳類です。北アメリカ大陸に広く分布し、その適応力の高さから様々な環境で生息しています。

分布

アメリカグマは、主にアメリカ合衆国、カナダ、メキシコに分布しています。模式標本の産地はアメリカ北東部であり、種小名「americanus」は「アメリカの」という意味を持ちます。かつては、ヒグマの生息域を避けるように森林地帯に生息していましたが、近年はヒグマの減少や絶滅に伴い、分布域を広げている地域も存在します。

形態

アメリカグマは、オスとメスで大きさに差があります。オスの体長は140〜200センチメートル、メスは120〜160センチメートル程度。尾の長さは8〜14センチメートル、体高は80〜95センチメートルです。体重はオスが47〜409キログラム、メスが39〜236キログラムと、個体差が大きいのが特徴です。

体毛は短く、基本的には黒色ですが、地域や個体によって褐色の場合もあります。中には、胸部に白い斑点を持つ個体や、同じ親から生まれた幼獣でも体毛の色が異なる場合も見られます。また、シロアメリカグマのように、劣性遺伝によって白い体毛を持つ個体も存在します。

小臼歯は痕跡的で、爪は短く6センチメートルを超えることはありません。乳頭の数は6個です。生まれたばかりの幼獣は200〜450グラムと小さく、春に冬眠から目覚める頃には2〜5キログラムに成長します。

分類

アメリカグマは、2005年現在、16の亜種に分類されています。亜種の中には、アオアメリカグマやシロアメリカグマなど、特徴的な体色を持つものもいます。以下に代表的な亜種を挙げます。

Ursus americanus americanus (アメリカクロクマ)
Ursus americanus altifrontalis
Ursus americanus amblyceps
Ursus americanus californiensis
Ursus americanus carlottae
Ursus americanus cinnamomum
Ursus americanus emmonsii (アオアメリカグマ)
Ursus americanus eremicus
Ursus americanus floridanus
Ursus americanus hamiltoni
Ursus americanus kermodei (シロアメリカグマ)
Ursus americanus luteolus
Ursus americanus machetes
Ursus americanus perniger
Ursus americanus pugnax
Ursus americanus vancouveri

生態

アメリカグマは主に森林に生息し、ヒグマを避ける傾向があります。そのため、ヒグマが減少した地域では分布を拡大することがあります。オスの縄張りは重複しませんが、メスの縄張りは他の個体と重複することがあります。ただし、ゴミ捨て場など食物が豊富な場所では縄張りを形成しないこともあります。

活動時間は薄明性傾向が強いですが、食物が豊富な場所では昼夜問わず活動することもあります。冬眠は10月から翌5月にかけて行われます。

食性は植物食傾向の強い雑食性です。果実、種子、草、昆虫、魚類、動物の死骸など、様々なものを食べます。脊椎動物を捕食することもありますが、頻度は高くありません。アメリカ中南部やメキシコではサボテンやユッカも食料とします。秋には果実や種子を食べて脂肪を蓄えます。かつてはアメリカグリが重要な食料でしたが、減少に伴いコナラ属やアメリカブナなどに切り替えています。

繁殖は胎生で、主に5〜7月に交尾を行います。妊娠期間は2ヶ月ですが、着床遅延があります。1〜2月に1回に1〜5匹（主に2〜3匹）の幼獣を出産します。出産間隔は隔年ですが、地域によって変動があります。授乳期間は6〜8ヶ月です。オスは3〜4年、メスは2〜9年で性成熟します。寿命は30年に達することもありますが、人間による狩猟や交通事故などで平均寿命は10年程度とされています。

人間との関係

アメリカグマは食用やハンティングトロフィーの対象となることがあります。毛皮は取引が規制されているため、需要は少ないと考えられています。一方で、樹皮剥ぎによる材木の被害や農作物の食害、蜂蜜の窃食など、害獣として扱われることもあります。また、山小屋やキャンプ場での食物を漁る際に人間に危害を加えることもあります。

亜種U. a. floridanus、亜種U. a. luteolusは絶滅の危機に瀕しているとされています。
日本ではクマ科単位で特定動物に指定されています。

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