アメリカ合衆国国定歴史建造物

アメリカ合衆国国定歴史建造物（NHL）について

アメリカ合衆国国定歴史建造物（National Historic Landmark, NHL）は、アメリカの文化遺産を保護する仕組みの一環です。NHLは、アメリカ合衆国の内務長官によって、歴史的に重要な意味を持つ建物や地域、サイト、物体、構造物が正式に認定されたものを指します。この制度は、国が文化的遺産の保護と管理に取り組むことで、国の歴史を後世に伝える役割を果たしています。

NHLの概要

NHLの制度は、アメリカ合衆国に存在する90,000件以上の国家歴史登録財と並行して運用されていますが、NHLに認定されているのは約2500件と、全体の3%以下に過ぎません。このNHLに類似した制度としては、国定歴史建造物地区（National Historic Landmark District, NHLD）があり、これは歴史的な建物や地域そのものと、それに関連する付帯資産を含む広範な区域を指します。

制度の歴史

NHLの制度の起源は1935年に成立した歴史地区法に遡ります。この法律は、文化遺産を保護するための基盤を築くものであり、内務長官に遺産の公式指定を行う権限を与えました。この結果、国立公園局が歴史的な連邦所有の財産の管理を担うようになり、多くの重要な遺産が特定され、登録されていきました。最初に指定された文化財は、セントルイスのジェファーソン・ナショナル・エクスパンション・メモリアルであり、その後も多くの史跡が登録されています。制度の施行により、1970年代以降は登録手順が改訂され、所有者の同意が求められることになりました。

指定の基準

内務長官がNHLに指定する際の条件には、以下のようなものがあります：

• - アメリカの歴史上重要な出来事があった場所
• - 著名な人物が居住または勤務した場所
• - アメリカの理念を象徴するもの
• - 特に優れた建築技術や設計の例
• - 地域の伝統的な生活様式を示すもの
• - 考古学的に貴重な情報源となるもの

現在のNHLの状況

2020年時点では、全米50州およびワシントンD.C.において約2500か所がNHLとして認定されています。特に、ペンシルベニア州、マサチューセッツ州、ニューヨーク州の3州に登録の約四分の一が集中しています。都市ごとに見ると、ボストン、フィラデルフィア、ニューヨークが多くのNHLを有し、これら3都市だけで他の州を上回る数が存在します。さらに、ニューヨーク市単独での登録数は、他州と比べても特に多い状態です。

また、NHLに指定される物件の半数は私有財産です。そのため、新たにNHLに登録される物件の運営には、国立公園局からの支援や規則に則った保護管理が重要です。民間団体である「National Historic Landmark Stewards Association」は、これらの物件の所有者や支援者によって構成され、NHLの保全や保護の活動を行っています。

まとめ

アメリカ合衆国国定歴史建造物(NHL)は、国が歴史的価値を認めた貴重な施設です。この制度の意義は、文化遺産を保護し、国民の歴史認識を深めることにあります。今後も、NHLはアメリカの多様な文化を守り続けていくことでしょう。

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