アメリカ合衆国情報安全保障監督局

アメリカ合衆国情報安全保障監督局（ISOO）は、国家安全保障に関わる機密情報の管理を監督する重要な政府機関です。1978年、ジミー・カーター大統領の行政命令によって設立され、アメリカ国立公文書記録管理局（NARA）に属していますが、国家安全保障会議の指針に従って活動しています。

ISOOの主要な役割は、政府機関における機密情報の統一的な管理です。具体的には、機密レベルの分類システム、国家産業安全保障計画（NISP）などの方針決定と監督を行い、国民の安全と情報公開のバランスを保つことを目指しています。

機密レベル分類システム

アメリカ合衆国の機密情報は、「公開(Unclassified)」と「非公開(Classified)」に大別され、非公開情報はさらに3段階に分類されます。

最高機密 (Top Secret): 情報の公開が国家安全に極めて重大な損害を与えるもの。
極秘 (Secret): 情報の公開が国家安全に深刻な損害を与えるもの。
* 秘 (Confidential): 情報の公開が国家安全に損害を与える可能性のあるもの。

これらの機密情報へのアクセスには、厳格なクリアランス（安全証明）が必要です。クリアランスは、厳格な身辺調査を経て、潔白性が証明された者にのみ付与されます。特に、暗号理論、軍事、諜報活動、核兵器関連の情報へのアクセスには、より厳しい調査が実施されます。

さらに、必要性の原則（Need to know）に基づき、情報へのアクセス権限が制限される場合があります。これは、機密情報の管理者にとって重要な基準であり、情報提供前に受け取り手が任務遂行にその情報が必要かどうかを確認する必要があります。

機密文書には、様々な機密レベルの標識が付けられます。近年では、情報公開の進展に伴い、機密分類が抹消される文書も増加しています。

特殊なアクセスプログラム（SAP）やコードワード（SCI）など、より高度な機密レベルも存在します。これらの分類は複雑で、政府内部でも解釈に違いが見られる場合があります。具体例として、ソ連高官の盗聴作戦「GAMMA GUPY」、ベノナ作戦、通信傍受情報（DINAR、TRINE、UMBRA）、キーホール作戦（TK: TALENT KEYHOLE）などが挙げられます。これらの情報は、複数の機密レベルのクリアランスが必要になります。

その他、ORCON（発行者管理）、PRORIN（民間企業情報）、LIMDIS（限定配布）、NOFORN（外国人には公開しない）、NOCONTRACT（正規職員のみ）、EO（黙読のみ）、WNINTEL（情報収集手段を含む）、FVEY（5カ国のみ）、NF（米国人のみ）、COMMINT（通信傍受情報）といった、様々な標識が使用されます。

機密情報の分類は文書全体、章、節、ページ単位で行われ、文書によって異なるレベルの機密指定がなされます。

公開情報であっても、「機微であるが非分類 (Sensitive But Unclassified)」や「官用のみ (FOUO)」といったレッテルが貼られ、アクセスが制限される場合があります。

国家産業安全保障計画 (NISP)

NISPは、民間企業への機密情報の管理を監督する計画です。国家安全保障会議が方針を決定し、ISOO局長が実施権限を持ちます。国防総省、エネルギー省、CIA、原子力規制委員会がそれぞれ権限を有しています。

行政命令第12958号

クリントン大統領によって発令されたこの命令は、文書の機密化基準を見直し、膨大な数の政府文書を公開しました。しかし、審査不足による情報漏洩の懸念から改正され、国家安全に関わる情報は再び非公開とされました。

諸機関間安全保障上訴委員会 (ISCAP)

ISCAPは、政府文書の機密解除に関する審査や、情報公開請求への対応を行う機関です。情報自由法に基づく公開請求への対応など、日本の情報公開・個人情報保護審議会に相当する役割を担っています。

ISOOは、国家安全保障情報の適切な管理と情報公開のバランスを保つ上で、重要な役割を担っていると言えるでしょう。

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