アメリカ国立公文書記録管理局

国立公文書記録管理局（NARA）について

国立公文書記録管理局、通称NARA（National Archives and Records Administration）は、アメリカ合衆国の政府機関による書類と貴重な歴史資料の保管・管理を行っている特別な施設です。この機関は独立した連邦政府の機関であり、一貫して歴史的文書の保存と一般市民への資料閲覧の監督を目的としています。NARAは、議会の決議書や大統領の布告、各種行政命令、また連邦行政規則集の発行を業務の一環として行っています。

NARAの歴史

NARAの起源は1934年にまで遡ります。当初、各省庁が独自に文書を保管していましたが、文書の紛失や破損が頻発したため、連邦政府文書の統一管理の必要性が高まりました。そのため、連邦議会がNARA設立を決定し、合衆国アーキビスト（米国公文書最高責任者）が任命されました。この役職者は、各連邦機関からNARAへの文書移管を指示できる権限を持ちます。

NARAは1949年に一度共通役務庁に組み込まれましたが、1985年には再び独立機関となりました。ここで保管される文書は基本的に著作権から保護されておらず、大部分はパブリック・ドメインとして利用可能です。しかし、一部は第三者からの寄贈や契約によるもので、著作権が存在します。また、NARAには国家機密文書を保存する役割もあり、情報安全保障監督局はこれにかかる方針の決定及び監視を行っています。

所蔵する資料

NARAには、紙やマイクロフィルム、航空写真、静止画、動画映像など、さまざまな形態の資料が保管されています。2021年現在で、所蔵品は40億以上もの公文書や、30万本の映像フィルム、500万以上の地図や設計図、さらには900万枚の航空写真や1400万枚のスチル写真から成り立っています。この豊富なコレクションは、記録グループ（RG : Record Groups）と呼ばれる体系で整理され、特別な目的で収集されたコレクションには独自の番号が付与され管理されています。

現在、NARAはその所蔵物の約50%をオンラインで検索可能にするプロジェクトを進行中で、アーカイブ・リサーチ・カタログ（ARC）を通じて一般の人々に資料へのアクセスを提供しています。この活動により、研究者だけでなく、歴史に興味を持つ一般市民も利用しやすくなっています。

日本との関わり

特に日本に関する資料について、NARAは太平洋戦争や沖縄統治に関する文書、歴史的な外交資料を保持しています。これには真珠湾攻撃に関連する記録や、戦後の処理に関わる資料が含まれ、日本の研究者にとって貴重な情報源です。さらに、歴史的な家系図作成者にとっても、国勢調査や移民船の名簿など、利用されている資料が多数存在しています。

施設と展示

NARAの本館はワシントンD.C.に位置し、アメリカ合衆国憲法のオリジナル文書も展示されています。通常の資料閲覧と展示スペースは入口が異なり、一般市民は展示を自由に訪れることができます。また、本館に加え、新館も存在し、主に第二次大戦以降の資料が保管されています。両館は無料バスでつながれており、一般訪問者がアクセスしやすくなっています。

課題と今後の展望

NARAでは1973年に発生した火災によって多くの軍人記録を失いましたが、その後の復旧努力により一部の情報は再構築されました。また、最近では政府による資料の「再分類」問題が指摘されることもあります。この影響で、過去に公開された文書が再び非公開とされるケースが増えており、研究者や市民の間で議論を呼んでいます。

今後もデジタルアーカイブの推進が期待され、オンラインでの閲覧可能な資料の拡充が求められています。NARAの活動は、歴史的資料を通じて市民の知る権利を守り続け、将来の研究に資する重要な役割を果たしているのです。

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