アメリカ大使館爆破事件 (1998年)

アメリカ大使館爆破事件

アメリカ大使館爆破事件は、1998年8月7日にケニアのナイロビとタンザニアのダルエスサラームで発生した、アメリカ合衆国の大使館に対する連続テロ事件です。この事件は国際テロ組織であるアルカーイダが関与しているとされ、アメリカ政府はこれを理由に報復攻撃を行いました。

事件の背景と経緯

事件の発端は1994年にさかのぼります。この年、テロリストたちは、ナイロビにある福祉団体「ヘルプ・アフリカ・ピープル」の事務所を設立し、そこを隠れ蓑として大使館攻撃の準備を進めていたと考えられています。事件が発生する前には、トラック爆弾に関する密告や警備体制の脆弱性を指摘する意見があったにもかかわらず、CIAや国務省は十分な対策を講じませんでした。

1998年8月7日の午前10時40分、実行犯たちはアラブ人街に位置するヒルトップホテルに集合し、爆薬を搭載したトラックで出発しました。トラックはアメリカ大使館の裏手に回り、実行犯の一人が大使館敷地に手榴弾を投げ込んで爆破を行いました。この合図により、もう一台のトラックも大使館の正門へ突入し、同時に爆薬が炸裂しました。この自爆攻撃によって、施設内にいた213人が死亡し、5,000人以上が負傷しました。

アメリカ大使館自体は頑丈に建設されていたため、建物に大きな損害はなかったものの、爆発の影響で隣接する民間ビルが崩壊し、煉瓦の瓦礫が散乱する惨状が広がりました。同じく実行されたタンザニアのダルエスサラームの大使館攻撃でも11人が死傷し、合計で多大な被害が生じました。

関与組織と攻撃の背景

この攻撃に対して「イスラム聖地解放軍」が犯行声明を発表しました。彼らは、パレスチナを占領しているイスラエルや、サウジアラビアに駐留している米軍の撤収を要求していました。さらには、事件が起きた日が湾岸戦争によるアメリカ軍のサウジアラビア駐留開始から8年目であったため、ウサーマ・ビン・ラーディンがこの時期を選んだとも言われています。

テロ後の反応と報復

アメリカ政府は、事件の発生後すぐに動きました。ビル・クリントン大統領は、アルカーイダの関与が確認された後、報復攻撃を決定。8月20日には、スーダンとアフガニスタンに対してミサイル攻撃を実施しました。しかし、スーダンの化学工場がアルカーイダとは無関係だったことが判明し、クリントンは議会から激しい非難にさらされました。

さらに、FBIは事件の実行犯を追跡し、元アメリカ兵のアリ・ムハマドを逮捕しました。彼は大使館の偵察をしていたことを認め、ビン・ラーディンと共に作戦会議を行ったことを証言しました。これを受けて、ビン・ラーディンは起訴され、国際社会も彼の引き渡しを求めるようになりましたが、タリバン政権はこれを拒否しました。

事件の影響とその後

この事件は、アメリカにとってのテロリズムとの戦いの始まりを象徴するものとなりました。その後のアメリカの対テロ政策に大きな影響を与え、犯罪者は次々と追跡されるようになりました。2013年には、事件に関与したナジ・アブドゥルハメド・ルカイが拘束され、2020年には首謀者の一人が死亡するなど、事件の影響は長引きました。

アメリカ大使館爆破事件は、今日においてもテロの脅威を考える上で重要な歴史的事例の一つとなっており、国際社会が一体となってテロリズムに立ち向かう必要性を認識させるものでした。

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