ダルエスサラーム

ダルエスサラーム：タンザニアの経済と文化の中心地

インド洋に面したタンザニアの港湾都市、ダルエスサラーム。かつてはタンザニアの首都として栄え、現在も経済の中心地として重要な役割を担っています。別名ダレサラーム、ダールとも呼ばれるこの都市は、1860年代にザンジバルのスルタンによって建設され、当初は離宮として使われていました。

ダルエスサラームの名はアラビア語で「平和の家」を意味し、その名の通り、建設当初はアラブ商人やインド商人を招き入れ、商業と農業の発展を目指しました。しかし、スルタンの死後一時的に衰退したのち、1887年にはドイツの勢力下に置かれ、1895年にはドイツ領東アフリカの首都に。この時代には、マジマジ反乱などの抵抗運動もありましたが、ドイツ軍の駐留によって支配は強化されました。第一次世界大戦後にはイギリスの委任統治領となり、イギリスによる統治下では、インドからの移民も多く受け入れました。

第二次世界大戦後、タンガニーカの独立運動の中心地となり、1961年に独立を達成。1965年にはザンジバルと合邦し、タンザニア連合共和国が誕生した際には、ダルエスサラームが首都となりました。しかし、1973年に首都は内陸部のドドマに移転。現在も多くの官公庁や中央銀行がダルエスサラームに残っているため、実質的な首都機能は依然としてダルエスサラームにあります。1978年にはコレラが流行し、交通遮断などの対策が行われました。

ダルエスサラームは熱帯サバナ気候で、高温多湿な気候です。年間平均気温は30℃前後で、最低気温は20℃前後。年間降水量は約1100mmです。

行政区分は5つの県（Ilala、Kinondoni、Temeke、Kigamboni、Ubungo）から成り、人口は約538万人（2022年推定）と、タンザニア最大の都市です。

ダルエスサラームには、タンザニア銀行やダルエスサラーム証券取引所などの重要な経済機関が集中しています。カリアコ市場は、かつてのイギリス海軍輸送隊に由来する名前で、現在も賑わっています。

交通網は、ジュリウス・ニエレレ国際空港、ダルエスサラーム港といった重要な拠点に加え、中央線、タンザン鉄道といった鉄道網が整備されています。市内交通にはダラダラと呼ばれる小型バスが広く利用され、近年ではバス・ラピッド・トランジット（DART）も運行開始されました。

教育機関としては、ダルエスサラーム大学が有名で、タンザニア最高の学府として知られています。スポーツでは、サッカーが盛んで、Young Africans S.C.、Simba S.C.、Azam F.C.などの有名クラブが存在します。

観光名所としてはタンザニア国立博物館などがあり、歴史や文化に触れることができます。また、多様な料理も魅力の一つです。ドイツ時代の歴史的建造物や、現代的な高層ビルが立ち並ぶ街並みは、歴史と近代が融合した独特の雰囲気を醸し出しています。姉妹都市にはハンブルク（ドイツ）、サムスン（トルコ）、常州市（中国）、マーザンダラーン州（イラン）などがあります。

ダルエスサラームは、歴史、文化、経済が複雑に絡み合い、現代タンザニアを代表する活力ある都市です。その発展の歴史と、多様な文化の融合が、独特の都市景観と魅力を生み出しています。

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